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・※ ページ10

*






Aが自分の名前を呼ぶ筈なんかない

けれど今、Aは確かに呼んだ。突然の事に玄弥が言葉を失って
いると背中に柔らかい感触が触れる



「何して……」




傷口を労るように。Aはそっとそこへ唇を重ねていた




「……あ」



ここでようやく自分のした事に気がついたのか慌てて
玄弥の側から離れた



「こ、これは……その」

「……A」

「わっ!?」



突如、玄弥が振り向いてそのままAをソファーに沈めた

いつもなら離してと暴れたり、触らないでと叫んだりする筈なのに
今のAはされるがままだ



「すまん。許してくれ」

「何、ちょっと……っ!?」



初めてAから自分の名前を呼んでくれた。初めて触れてくれた。
手当ての途中だというのに玄弥はお構いなしに唇を貪る



「んっ、駄目……っ、ですってば!」

「無理やって。こんなん我慢出来る方がおかしいわ」



すると不意に指でそっとAの目元を拭う



「やっぱり泣いてたんか」

「……」

「心配かけたな」

「……せめて病院くらい行ってください」

「分かった」

「………」

「……続けてええか」

「嫌です。手当てもまだ終わってません」



これでこそいつものAだ。しかし手当てなんかもはや
どうでも良くて玄弥はただひたすらAに触れる事しか
考えられなくなっていて……



「そんなん後でええわ」

「ひゃ……っ!」



そのまま額や頬、首筋に唇を落としていき……それが鎖骨にまで
下りたその時だった



「……何するんですかぁっ!!」

「いっ!?」



背中の傷に思い切り爪を立てられて一瞬、動きが止まった隙に
Aは玄弥を突き飛ばした



「ここは普通、流れに任せるとこやろ!?」

「変態!色ボケ男!」

「言い過ぎや!」

「さっさと後ろ向いて下さい!いつまでもそんな格好してたら
 風邪引きますよ!」



渋々後ろを向き、今度こそ手当てを終わらせると既にAは
いつもの無表情に近いスンッとした顔に戻っていた

まさにお預けを食らった玄弥は不満げな表情を浮かべながら
恨めしそうにAを睨み付ける



「Aから誘った癖に……」

「誘ってません」

「まぁええわ。俺、今日は疲れたから先に寝るな」

「ご勝手にどうぞ」



寝室に向かう直前、玄弥はAの耳元で囁く



「ありがとうなA。愛してる」

「……」

「おやすみ」



扉がパタン……と閉まった直後、顔を真っ赤にしたAは
その場にズルズルと座り込むのだった




*

5 恩人に誓う→←4 認めたくない



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ゆず(プロフ) - ぷるんさん» 夢主自身もだいぶ揺らいでますからね……果たしてどうなるのでしょう😳 (12月22日 17時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - ゆずさん» Q&Aありがとうございます!お話に緊迫感が出てきてますます目が離せない展開になってきてますね😳 (12月22日 11時) (レス) id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ぷるんさん» ありがとうございます!暫くは夢主QAの回答を含むお話が多くなると思います! (12月12日 10時) (レス) id: 69150dbb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぷるん(プロフ) - 更新の大丸さん、国生さん、そして戸狩さん…!イケおじ尽くしで癒やされます…! (12月12日 10時) (レス) @page18 id: 0de05b8548 (このIDを非表示/違反報告)
こてつ(プロフ) - ゆずさん» 仲間がいて嬉しいです~!いえいえ‼︎逆に宣伝してくださってほんとにありがとうこざいます😭ほんとに楽しみです‼︎ (10月29日 23時) (レス) id: e77a4a71a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず | 作成日時:2023年7月20日 17時

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