バグ大 イケおじ短編集

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「薄情な女になったものだな。A」


男……大丸の側には酒の入ったお猪口と空のままのお猪口の
二つが置かれている


「あれ程まとわりついていたというのに」




＿＿靖公さんっ、結婚して下さい！



元々は目をかけていたアサシンの一人娘だ

その繋がりで昔から顔は知ってはいた。自分の何が琴線に
触れたかは不明だがもはや断る事すら面倒な程に自分と一緒に
なりたいと会う度に連呼し……



＿＿お前が酒の飲める大人の女になったら考えてやろう

＿＿分かりました！待ってて下さい




その後の事は思い出したくない。初めての単独任務に失敗したと
報告を受け、慌てて現場に駆けつけたがそこにAの姿はなかった

目的の為なら切り捨てるつもりでいた。なのに気がつけば
躍起になってその姿を探している……


「愚かなものだ」


その蔑みは最初から守るつもりのない約束を口にした自分と
それを真に受けた結果、記憶を失ってしまったAに向けられて
いるのだろう


「……世良か」


扉の向こうに佇んでいた世良の気配に気が付いた大丸は中へ
入るように促す


「向日葵は未だに記憶を失ったままのようです」

「だろうな」

「宜しかったのですか？命令さえあれば今日にでも
　連れ戻す事は出来ましたが」

「自ら戻ってくれば許すくらいの温情は与えるつもりだった。
　……結局、無駄だったみだいだがな」


その酒の呷り方は苛立っているのを顕著に現している


「まぁいい。これで手加減する必要も無くなった」

「……多少強引な手段を使っても宜しいのですね」

「さすれば少しは理解するだろう。自分の立場をな」


女には花になぞったコードネームを与えている。Aには
何が良いかと考えた時、真っ先に向日葵が浮かんだ

しかし結局、Aに対してそれで呼んだ事はない。それが
特別扱いだと気がついているのだろうか？そして後に気がついた
向日葵の花言葉……随分と気恥ずかしくなった事は今でも鮮明に
覚えている


「下がれ」

「はい」


そして再び大丸は一人になった。空のお猪口を手に取ると
少しカサついた指先で縁をそっとなぞる


「これは……お前の為に空けておく。A」


そこに酒が満たされた時、自分の空になった心も満たされる事を
期待しながらそれを伏せるのだった




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天王寺組　戸狩？→←エルペタス　大丸

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