バグ大 イケおじ短編集

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*三國side





全部演技やったんやで。A


「三國さん……もう」

「せやから貞治呼んでくれって言っとるやろ」


優しい大人を演じたのも、良き友人として接したのも全部
この時の為に……


「また好き勝手されたいんか？」

「……っ」


俺なんか好きで好きで仕方ないゆうのに。まぁそんなん
どうでもええか


「意地張るのもええ加減にせんと身が持たんで」

「あ……」


ほんの少し脅しかけただけで怯えた表情を浮かべるAは
ホンマに可愛い


「ほら言うてみい。そしたら少しは優しくしたる」

「……貞治さん」

「ええ子やな。A」

「や、何で……名前呼んだのに」


優しくする言うただけで止めるとは言っとらんで？A

既に抵抗らしい抵抗も出来なくなっている。だからこんな事
せんでもええんやけど……俺が今までどんなに惨めな思いを
してきたか少し理解させんとな


「こっちの方は正直やで」

「私、何かしましたか……」

「あ？」

「……怖い。いつもと、違う」


そうか。あくまで俺の気の迷いや言いたいんか


「いつまでも俺の気持ちに気付かんかったからや」


惨めやわホンマに。こんだけの事してもまだ俺はAの
特別になれん

せやったら本職らしく欲しいものは奪い取ったろうか


「お喋りは終いや。ちゃんと集中せな怒るで」


その甘ったるい唇は何度重ねても飽きん。それどころか
もっと……もっと、欲しくなってまう


「貞治さん……」

「もう離してやらんからな」


諦めたのか、それとも受け入れたのか。背中に回されたAの
頼りない腕の感触に俺は口角が上がるのを抑えられんかった



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「調べて欲しい事あるんやけどええか？俺の可愛い子を
　泣かした男の顔が知りたい」


Aに聞いた所で素直に教えてくれるとは思わんから俺は
側近の陣内にそれを頼む事にした


「何もせんて。相手はカタギやし」


陣内が断ったら情報屋に調べてもらうだけの話や。しかし
予想通り、二つ返事でそれを快諾してくれた

優秀な舎弟がおって俺はホンマに幸せもんやな


「ほな頼むで」


電話を終えた俺はまだ眠ったままのAの頬に唇を押し当てた

俺がどんなに欲しても手に入らんかったAの気持ちを要らん言う
生意気な男の顔ってどんなんやろうな


「A……本当に愛しとる」


次に目を覚ました時、Aの知ってる俺はおらん。一体どんな
顔をするのか楽しみやなぁ




*

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