バグ大 イケおじ短編集

獅子王組　眉済　リク ページ39

*




「縁談ですか」


いつ来てもおかしくはないと思っていた。しかしいざ
その話が持ち上がるとこんなにも動揺するものだとは……


「父からもそろそろ良いんじゃないのかって」

「当然断るんですよね」


寧ろそうでないと困る。しかし眉済の期待はあっさりと
裏切られる事となった


「引き受けようと思って……ます」

「！？」

「眉済さん？」

「どうして親の言いなりになろうとするんですか？
　お嬢らしくないですよ」


しかしこの時の眉済は聞き逃していた。先程、Aは
引き受けようと思っています(・・・・・・)と言った

つまりそれは……


「言いなりなんかじゃない。私の意志です」

「……す」

「え？」

「駄目です。お嬢が笑顔にならない結婚なんて認めません」


本音を言えば結婚なんてしてほしくない。だけどいつかは
そんな日が来てしまう

それが愛し合っての事ならまだいい。だがAの浅はかな
考えくらい眉済には分かっていた


「金ですよね」

「……」

「それは俺等が解決するべき問題でお嬢が気にする事では
　ありません」

「……でも」


確かに裕福な組と繋がりがあれば財政事情というのも少しは
改善するかもしれない

しかし年相応の恋愛を体験した事がないAに眉済はそんな事を
させたくなかった。例え自分の気持ちを抜きにしたとしてもだ


「眉済さん……黒澤さんといつも喧嘩してる」

「それは」

「お金の心配が無くなればまた二人仲良く出来ますよね」

「……お嬢」


眉済はそっとAの手を握る


「俺達の事は気にしないでいいんです。だから……どうか
　考え直して下さい。貴方は好きな人と幸せになる権利がある」

「好きな人と……」

「ええ」

「じゃあ……私と結婚してくれますか？」

「え？」

「ずっと眉済さんが好きだったんです」


聞き間違いかと思ったがその真剣な眼差しがそれを否定する。
だとしたら……


「……自惚れじゃないんですね」

「ま、眉済さん……？」

「恐れ多くも俺はお嬢の事をお慕いしていました」


年の差、身分違いもいい所。だが思いを寄せている本人から
思いを打ち明けられたのなら何も問題はない


「……縁談は考え直していただけますね？」

「お、お父様には私から話をします」


怒られるなら一緒に……いや、自分が代わりにと思っていた




「今まで散々我慢してきたんだからこれくらいワガママ言って
　いいでしょ！？馬鹿親父！！」



それが要らぬ心配だった事は組内に響くAの大声ですぐに
分かるのだった




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