バグ大 イケおじ短編集

京極組　六車　リク ページ36

*六車side





「人の顔ジロジロ見るとか失礼じゃないですか？六車の兄貴」

「す、すまん」


怒った顔も可愛いとかもはや卑怯だと思う。本人はあまり好きでは
ないみたいだがその吊り目も、笑った時に覗く八重歯も俺にすれば
チャームポイントでしかない

だが生憎とAは俺には全く懐いていない。それどころか嫌って
いる節すらある。それについては一度、高砂に相談したが……


「乙女の心は複雑なんですよ。六車の兄貴」


そうとだけ返されて結局、この関係を改善する事もないまま
時間だけが過ぎていく日々を過ごしていた



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「あー……疲れた」


カチコミと事務作業の二択なら俺は圧倒的にカチコミを選ぶ。
どうも頭を使う書類整理はいつまで経っても慣れない


「……あ」

「何ですか」


隣の席で同じく作業しているAの前でそんな事言うべきでは
なかったな。せっかく二人きりで残業だというのに……


「それ貸してください」

「は？いや、これは俺のやる……」

「疲れているんですよね？さっさとお帰りになられたら
　いかがですか」

「だが……」


A一人残して帰るわけにいかない


「そんな顔されては困るんですよ。心配で仕事に集中出来ません」

「え？」

「……あっ」


その時、ふと溢れたAの本音を聞いた俺は書類が床に
散らばった事なんか気にせずその体を抱きしめていた


「ちょ、六車の兄貴っ！」

「可愛いな。お前」


そのツンツンした態度で他の組員から誤解されがち。俺は
何とかそれを解こうとしていたが……もう止めておこう

不意に現れるこのデレを真正面から受けて正気を保てる男が
いるだろうか？少なくとも俺は無理だ

こんな可愛いギャップを他の男共が知る必要なんか全くない


「っ、馬鹿じゃないんですか」

「それでもいい」


きっと明日からまた冷たくされるんだろうが……別に構わない。
Aが俺の事を心配してくれたという事実だけでも今は充分に
満たされているのだから







「む、六車の兄貴が……だ、抱きしめて……くれました」

「あら。良かったわねぇ」

「高砂の兄貴、私……恥ずかしくて顔が見れません。
　これからどうやって接していけば……！」

「ふふっ。これまで通りでいいんじゃないかしら」




乙女の心は複雑。確かに俺はまだAの気持ちなんか
この時少しも理解していなかった





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