バグ大 イケおじ短編集

【からかい※】戸狩ver ページ28

*





「……甘えたいんか？」

「え？」



まさに唇が触れそうになった時。何気なしに呟かれた一言に
Aは動きを止めた



「暫く構ってやれんかったし、可哀想な事したな」

「え、いや違」

「けどここ事務所やしなぁ……帰ってから可愛がったる」

「そうじゃなくて」



まずい。非常にまずい。からかうつもりでキスをする振りを
したのに冗談ですなんて言えない空気感になってしまった

一先ず戸狩から離れないといけないと思ったAは後ろに
下がろうとしたけど肩を掴まれてしまう



「せやから今はこれで我慢してな」

「ま、待って！」

「んぐっ！？」



既の所だった。強引に唇を手で押さえつけると戸狩は少し
驚いたように目を軽く見開き、ジッとAを見ている



「そんな不機嫌にならんといて」

「じょ……冗談です！」

「はぁ？」



＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿






「つまり騙そうとしたって事か」



怒りで眉がヒクヒクと動く戸狩を目の前にAはただただ
平謝りするしかなかった



「A。大人をからかったらどうなるか分かってるか？」

「そ、それは……」



＿＿ドンッ！



「きゃっ……！？」



壁に押さえつけられ、苦しそうに身を捩ると面白いとばかりに
戸狩はクツクツと笑う



「ええ眺めやなぁ」

「と、戸狩の兄貴……」

「玄弥って呼ばんかい。前にも言うたやろ」

「玄弥さ……ん」

「……ん」



名前を呼ばれた事で幾分怒りが治まったのか表情から険しさが
消える。その代わり、こちらを見つめるその瞳に熱がこもった

無防備にさらされた首筋に唇を寄せるとAは必死に声を
抑えようと口をキュッと閉じる



「あんま可愛い事せんといて。抑えられんくなったら
　困るのはAやで？」

「そ、そこ……」

「なんや？」

「くすぐったいから、喋らないで……下さいっ」



自ら弱点を言ってしまう素直さにはもはや笑うしか無い



「素直な子は大好きや」

「ひゃっ！？」



軽く歯を立てるだけで半泣きにAを見ると戸狩は
悪どい笑みを浮かべる



「A。今日寝れると思わん方がええで」



からかうつもりが逆に追い込まれてしまう事態になり、Aは
自分の軽はずみの行動を悔やむも時すでに遅し

帰宅後、嫌だ嫌だを繰り返すAに戸狩は囁く





「大人ってAが思っている以上にズルいんやで。分かったか？」




*

CODE‐EL　御前　※→←【からかい※】国生ver

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す