ヒューマンバグ大学 中編集

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散々好き放題にされたAは今、大嶽の腕の中でぐっすりと
眠っている

額にかかった前髪を払うと散々触れたというのにまだ物足りなさを
感じていた大嶽はそこへ唇を落とした



「A……」



この関係はきっと些細な事で崩れ去ってしまう。こんなに傷つけて
泣かせて。そうまでして無理やり繋ぎ止めたのに結局は……

初めて本気になった女すらまともに愛せない自分が嫌になる



「なぁ……」



ふと目に入った不退転の証である刺青。それは温い欲に
再び溺れようとした大嶽自身を睨んでいるように見えた



「……そうやな。今更、戻れんよな」



自分の大切な人を奪った関東極道に対する怒り。それは
ただの一度も忘れた事などない



「待っとれA。ちゃんと終わらしたるから」



そうすればきっとAと向き合える筈。そう信じている



「せやからそん時は愛してるって言ってくれ」



しかし大嶽は気付いていない。Aが東京へ向かったのは
城戸の為でもあるがそれ以上に自分の為だった事を

城戸が亡くなったら大嶽は酷く悲しむ。不器用ながらも
愛してくれる大嶽のそんな顔を見たくないと必死になり……

結局、Aと大嶽の思いが重なるなんて最初からの無理だったのだ



「ごめんなさ……徳史さ……」

「……寝言まで謝らんでええ」



夢の中ですら自分はAを傷つけているのか。どこまでも
やりきれない気持ちを抱えながら起こさないようにそっと
キスをした

頭を軽く撫でると幾分、その表情が柔らかくなりホッとする



「泣いてる顔もええと思ったけどやっぱりこの方がええな。
　可愛いで」

「ん……」



いつまでもこうしてる訳にはいかない。なのにAといると
ずっとこのままだったら良いのにと強く願ってしまう



「愛してるでA。一生、離さんからな」



全く、自分も腑抜けになったものだと大嶽は自身に
苦笑するのだった




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