ヒューマンバグ大学 中編集

沈黙　天羽組　和中　※　リク ページ13

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せっかく自分のような渡世に生きる人間と一緒になる、そう
決めてくれた最愛の妻の顔を曇らせる原因は何なのか

当の本人が何も切り出さないのであればどうする事も出来ない




「……」

「蒼一郎さん？」

「困った事があればすぐに言うんだ。分かったな」



この世界は何があるか分からない。悲しい事に任侠を捨てた
もはや外道と言っても過言ではない輩がAを狙う恐れもある

……もっとも、そんな事になれば形振りなんて和中自身も
構っていられないのだろう



「……ありがとうございます」



Aもまた、和中が何かに気がついているのは分かっていた。
ただ、どうしても言い出す気になれない



「……そろそろ組へ向かわないと遅刻しますよ」

「そうだな」



名残惜しそうに唇を離すと和中はようやく玄関を出るのだった




＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

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「これ、どうしよう……」



テーブルの上には一通の封筒。開封すらされていない



「どうせまた……」



差出人の名前すら書かれていないその封筒をAはゴミ箱に
捨てた。この気味の悪い物が届くようになってからだいぶ経つが
ポストに直接投函したであろう人間の正体はまだ分からない

一度は相談しようとも思ったけれど……まだ実害が出ていない
この状況で話でいいものか、多忙な和中の迷惑にならないか
それらの事が理由で未だに話せずにいる



「……夕飯の買い出し行かないと」



こんな事ばかり考えていられない。仕事に向かった愛する夫が
安らげる場所を準備しないといけないのだから










＿＿＿カタンッ






Aがそう思っていた時、ポストにまた先程捨てた物と
同じ封筒が投函されていたのだった





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