、 ページ30
「は......。」
コネシマはAの頬を掴んでいた手を離した。
不思議と、叩いてやりたい気持ちは沸かない。
『いた......いです。もしかして、新手の訓練ですか？』
少し赤くなった左頬をさすりながら、Aの目は少し潤んでいる。
痛みに弱いのが、Aの欠点だ。
「せ......せやけど。」
完全に脳内に宇宙が広がっているエーミールを無視し、コネシマは声を絞り出した。
先程までの苛立ちが、なくなっている。
泣いていることに、腹が立っていたのではないのか、とコネシマは疑問を浮かべる。
不思議と今の涙には、怒りが湧き上がらない。
先程、Aの頬を掴んだ手のひらは、少しだけ熱を帯びていた。
コネシマの瞳が揺らぐ。
おかしい。
どうして、こうなっている？
「と、とりあえず、よかったです。」
「何がやねん。おい、待てや、エーミール。」
その場を去ろうとする、エーミールの腕を掴んで、コネシマは引き止める。
二人の様子を眺めながら、Aは頬の痛みに耐えながら、言った。
『帰ってもいいですか。判子、まだ終わってないので。』
「あ、大丈夫ですよ。」
「は、ちょ、エミさん。」
エーミールの明るい声に、Aは頬を擦りながら出ていった。
「何してるんですか、コネシマさん。」
「俺に聞くな。」
二人共黙り込んだ。
両者椅子に座って、向かい合う。
暫くの沈黙のあと、コネシマは小さな声で言った。
「本気で叩いたら、絶対歯、折れるやん。それやと、犬の歯が抜けてるって不格好やん。」
「まあ、犬を傷つければ使い物にならなくなりますね。」
エーミールの言葉に、コネシマは頷く。
コネシマの頷きに、エーミールは帰っていいとみなしたのか、出ていった。
「兎に角、あいつの練習メニュー増やしたろ。」
放り投げたペンを手にとって、コネシマは机上に置く。
白紙はあったかと、引き出しをかき回し、くしゃくしゃの紙を見つけた。
手でシワを引き伸ばして、コネシマはペンを握って、動かし始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 596人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
2(プロフ) - 蠱毒さん» 大丈夫です！わざわざありがとうございます( . .)" (4月1日 23時) (
レス) id: 6ca65a7c69 (このIDを非表示/違反報告)
蠱毒(プロフ) - 2さん» ありがとうございます。そう言って、いただけて嬉しいです！こみゅーのメッセージの方にパスワードを送っても宜しいでしょうか？ (4月1日 9時) (レス) id: 8cf3c0ec6d (このIDを非表示/違反報告)
2(プロフ) - 面白くて続きが凄く気になるのですがパスワードが掛かってて続きを見れません💦良かったら教えてくれませんか？ (4月1日 2時) (レス) id: 6ca65a7c69 (このIDを非表示/違反報告)
くろねこ(プロフ) - とても面白かったです！続きが読みたいのですがパスワードが…教えて貰えないでしょうか、、 (1月11日 1時) (レス) @page50 id: f664205a1a (このIDを非表示/違反報告)
こがしアイス(プロフ) - インクさん» さあ、どうなるのでしょう。続編も是非、お楽しみください。 (2022年8月12日 23時) (レス) id: 8cf3c0ec6d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蠱毒 | 作者ホームページ：@kodomikodoku
作成日時：2022年8月7日 18時
