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・馬鹿に救済、それは滑稽 ページ1

インカムに、はいぼく、の四文字が流れる。


その文字を、女は最初、理解出来なかった。
女の脳内で、その四文字はくるくると踊り続け、意味を成さない音になり、再びくっつき、しっかりした言葉に変換される。

今年から晴れて、大尉に昇進し、笑顔だった女の姿はない。
掃討戦に移られる前に、逃げろ、という声に、彼女の目から涙が落ちる。
要塞の隠し通路の監視を任されていた、女は、いた部屋を出て、廊下を見渡した。

そこには残っている自軍の兵と、乗り込んできた敵国の捨て駒が取っ組み合っている。
その様子に、女は呆然とした。
硝煙の匂いも、血の匂いも、彼女の鼻腔をくすぐらない。





その一文字が彼女の脳を支配した。

どう抗っても終了。
腰の抜けそうな戦争経験の浅い彼女にも、大尉である、というほんの僅かな矜持があった。


捨て駒を斬っていく、その顔は、絶望による涙が覆っていた。
罪のない人間の命を奪って、無様に首をはねられて、そんな人生しか残っていないという絶望感に、何も考えずに彼女は走った。
涙と血で塗りたくられた顔に、威厳なんてない。

彼女が僅かな正気を取り戻したとき、立っているのは自身、そして数名の味方だけだった。
その中に、同期を見つけ、彼女が口を開いた瞬間、

同期の脳天を鉛の玉がぶち抜いた。
突然のことに、女は止まる。
ゆっくりと、飛んできた方向を振り向くと、新しい兵がいた。

兵の笑い声が微かに聞こえる。
女の死体を抱いていた。無論、抱きしめるの方ではなく、夜の意味で。


眼の前の光景がうまく、処理できず、女は口元を抑えた。
周りの兵士の中には、べちゃべちゃと、うずくまってもどしている者もいる。

「悪趣味なことはやめんかい。」

敵国の兵の言葉が聞こえる。
遠目に見ているのでよくわからないが、バッジの量から見て、そこそこ階級が高そうだ。
この人はまだ、情がありそうだ、と女は安堵した。

「生きてる女の方が、ええやろ。お前らも。」

違う、この人間は聖人ではない、天使の皮を被った極悪非道な悪魔だ。
命令を出そうと、口を開けたとき、銃声が彼女の耳に轟いた。
皮肉なことに、可視できる男性兵だけが倒れている。


声にならず、息が口から漏れた。
嗚呼、無力だ。
彼奴等に勝とうとする気力は、ここにいる兵士全員持っていなかった。

、→



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2(プロフ) - 蠱毒さん» 大丈夫です!わざわざありがとうございます( . .)" (4月1日 23時) (レス) id: 6ca65a7c69 (このIDを非表示/違反報告)
蠱毒(プロフ) - 2さん» ありがとうございます。そう言って、いただけて嬉しいです!こみゅーのメッセージの方にパスワードを送っても宜しいでしょうか? (4月1日 9時) (レス) id: 8cf3c0ec6d (このIDを非表示/違反報告)
2(プロフ) - 面白くて続きが凄く気になるのですがパスワードが掛かってて続きを見れません💦良かったら教えてくれませんか? (4月1日 2時) (レス) id: 6ca65a7c69 (このIDを非表示/違反報告)
くろねこ(プロフ) - とても面白かったです!続きが読みたいのですがパスワードが…教えて貰えないでしょうか、、 (1月11日 1時) (レス) @page50 id: f664205a1a (このIDを非表示/違反報告)
こがしアイス(プロフ) - インクさん» さあ、どうなるのでしょう。続編も是非、お楽しみください。 (2022年8月12日 23時) (レス) id: 8cf3c0ec6d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蠱毒 | 作者ホームページ:@kodomikodoku  
作成日時:2022年8月7日 18時

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