繊月が閉じる時【宝石の国】 (ページ13)

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皆を守れるような力がページ13

流石は新しい足だ。この前の時より安定性が高く、高く飛べる。そして何より欠けない。
さて、次はこのハサミの斬れ味を試して行こうじゃないか。

「青緑！援護を頼む！」

大きな声で言い放ち、チラリとフォスの方へ視線を向ける。
その頭はコクリ、と。上下へ動いていた。
これで保険も出来た、安心してこいつらを斬る事が出来る。

大きくハサミを広げ、月人が居る土台の上へ立てば端から端へと月人の頭を巻き添えに走って行く。
斬れ味はかはりいい、それと同時に軽いとなればかなり私好みの武器だ。
中々青緑もいい仕事をするな。
と。呑気に感心していれば、未だに月人が消えていない事に今更気付く。
はっ、と。月人の方へと視線を移せば、切れた頭の断面から何か白く刃物の付いた縄のようなものが飛んで来ていた。

しまった、新型の月人だったか。
向かってくる縄をハサミで切ろうとするも、ハサミが開くのが間に合わずに縄が腹辺りに巻き付く。
ミシ、締め付けられて軋む音がする。
バキ、限界まで締め付けられ、胴体が割れていく音も同時に耳に入ってきた。

注意力が足りていない。

＿俺ではない俺が、そう囁いてくる。

バキ

この先どうやったって無駄だ、今楽になったらいいんじゃないか？

＿ああ、確かにそれは。いいかもしれないな。

バキ

「クリソコラ！！！！」

青緑の声が耳に入ると同時に、別の俺の声も気配も、全て心から消えていく。
まだ、止まることは許されはしないようだな。

ふ、と。
あまりの不甲斐なさと、青緑のバカバカしすぎる優しさに笑みが零れてくる。

「遅い、ノロマが。」

そのまま青緑の攻撃によって、月人は消えていく。
ゆっくりと、重力に従って地面に吸い込まれていく。
風が身体全体を荒く撫でる。
まさに、空を飛んでいるかのようだ。

＿いや、そんな呑気な事を考えている場合じゃないな。
急いで右手の合金を操り、大きな枕のようなものを着地点に再現する。
これでバラバラに欠けて海の底行きといった未来は避けられるはずだ。

べチョ。
粉々になる未来は避けられたようで。
なんだかこの音にこの状況は＿虫を甘い匂いで誘ってくっつける、そんな草に誘われた虫のような気分というか。
そんな感じがする。

直後。ゆっくりと慎重に合金を元の腕の形に戻して、ほっと安心し1つ息を吐く。

＿＿＿次からはもっと警戒心を高めていかないとダメだ。
早く強くならなくては、皆を守れるように。