虹のような輝き ページ5
「新入りー、環境観察どうー!?」
風は、笑ったりするのか。怒ったりするのか。焦ったりするのか。
頬に当る風を感じながら、そんな疑問を心に抱く。
そして、その風に揺らされる花は、どんな気持ちを抱いているのだろう。
俺達と同じような、感情を持っているのか。
「動けないし喋れないしで、不安だろうな。お前も。」
と、そこで。青緑が不安そうな顔をしながら顔をのぞき込んできた。
「う、わぁ!?」
突然現れてきたもので驚き、後ろに仰け反る。
しまった、さっきの話も聞かれていたのだろうか。全く気づかなかった。
まだ理解のある宝石だったらよかったものの、よりによってこいつだ。
「大丈夫新入り…? 仕事のストレスでノイローゼになったの…?」
「うるさい。仕事をしていないお前には言われたくないな。」
自分でも気にしている所をつかれ、青緑は頬を膨らませる。
一体こいつのこの顔を見るのは何回目だったか、何かと突っかかってくるんだよな。
こんな事をしていないで、他の事をしていればいいものを。
「あら!」
後ろから聞いたことがなく、明るい声がする。
声がした方に振り向けば、美しく薄い虹に光っているような髪を持った宝石が居た。
眩しい、反射的に口からそんな言葉が漏れる。
「私はダイヤモンド、初めましてクリソコラ。」
眩しい、眩しすぎる。
綺麗な見た目に綺麗な声に綺麗な性格、すごく眩しい。
「あーっと…あ、あ。初めまして。」
自分もそう返すと、いい子ねー!と言いながら頭を撫でられた。
これは_実際年下だが、子供扱いされていないか?
その時、上手い事ダイヤモンドの髪に光が当たり、まさに虹が出来たかのように輝く。
虹の輝きは、自分には到底真似できないだろうとすぐに理解できた。
こんな宝石に、自分はなりたいのだろう。なれないとはわかっていても。
「気軽にダイヤって呼んでいいからね〜!」
「わかった、ダイヤ。」
直後、光が当たらなくなってダイヤの髪が光らなくなる。
それを見れば勿体ない。そんな、自分でもよくわからない気持ちを心に抱いた。
この勿体ない、という気持ちはなんなのだろうか。名前はなんとなくわかっても、それ自体が何なのかはさっぱりだ。
「ねぇダイヤ、ボルツは? 一緒じゃないの?」
「ああ、ちょっと、ね。」
目を伏せて、ダイヤは言う。
___今、不穏な風を肌が感じ取った。
「…さて、二人共。ちょっと伏せていてちょうだいね。」
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作者名:兀 | 作成日時:2018年6月3日 20時