シンジュクNo.2ホスト系女子。【伊弉冉一二三】

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「......まずいなぁ」


ミーティング五分前。

贈り物の後にお手洗いで席を外したものの、
未だにドキドキとうるさい鼓動に、少し焦りすらおぼえる。

何だ、あのふにゃふにゃとした笑顔は。

いつも接待のときに、彼はあんな表情をしているのだろうか。


そう思うと同時に、少し胸の奥がチクリと痛む。

いやだから、彼は男だ。しかもホスト。


「僕は何を......」


ふと鏡に映る自分を見て、苦笑する。

思った以上につらそうな自分の顔に、ただただ呆れることしかできなかった。



・



『はあ、今日も疲れたぁ』


風呂上がりの私は、ソファーに座って一つのびをした。

ふと静けさが寂しい部屋に、キュルルと小さくお腹が鳴る。
正直寝たいけれど、少し何か食べておきたいな。



『あ......ひふみの』


そうだ、我らがジゴロに貰ったお菓子があるんだ。

スーツの内ポケットにしまいこんだのを思い出し、クローゼットを開ける。


『えーと.....お、あった』


それにしても、ずいぶん可愛いパッケージだ。

まぁ、一応女性向けの店だしなぁ。
男としてやってる身としては、ちょっと複雑な気持ち。


そんなことを考えつつ、カサリと音を立てながら開封すると
ひらりと何かが落ちた。


拾い上げて、おもてを見る。


『......ふ、何これ？かわいいなぁ』


"この間のお礼！甘いの苦手だったら、友達とかにあげちってもオールオッケ！"


ちょっぴり丸めの綺麗な文字と、小さなひよこのイラスト。
私が女の子を小鳥って呼ぶからかな？

それにしてもこのメッセージのテンション、いつもの彼っぽくはない。
もしかして、スーツを脱いだ方の一二三だろうか。


もう数年間は一緒に働いているが、スーツを脱いだ素の彼とはほとんど接したことがない。


本当に、彼がまだ入りたての頃くらいだ。
こんな感じのテンションだったような気は、しないこともない。あまり覚えていないけどね。


まぁ今後も仕事仲間としてしか会わないだろうから、そんなに考えることでもないだろう。


そう思いながら、貰ったお菓子をパクリと口に含む。

『ん、おいし』



可愛らしい女の子が好きそうな、甘い味が口に広がった。



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