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ガタンゴトンと揺れる車両。
来た頃よりは少し空いた車内で、僕達は隣り合わせに座っていた。
『スマホ、見つかってよかったね』
「そうだね、Aちゃんのおかげだよ。ありがとう」
どういたしまして、と微笑む彼女の横顔を見ながら
ふと、先生達とAちゃんが思わぬところで知り合いだったことを思い出す。
「そういえば、色々聞きたいことがあるんだけれど......」
二人とも、彼女とはどういった関係なのだろうか。
先生に関しては興味本意だが、夢野先生との関係は僕にとって重要だ。
何となく、あの親密さからはただならぬ予感がしてならない。
僕の質問に、彼女が指を顎に添えて『うーん』と唸る。
『ざっくり言っちゃえば、どっちも恩人なんだ』
「恩人?」
『神宮寺先生は、生死の間際に立つ母を救ってくれた人。幻太郎は......今の職を勧めた人かな』
「え、そうだったのかい?」
『うん、まぁ本人は冗談半分だったけどね。結果的にはそうなんだ』
つまり、彼女が今ホストという職をしているのは、少なからず彼のおかげ。
ということは、僕と彼女の出会いも、実質彼のおかげ......?
うーん、納得いかないね......
「......夢野先生のことは、どう思っているんだい?」
『そうだなぁ、お兄ちゃん的な感じかもね。歳は近いから親しみやすいけど』
「お兄さん、か」
ふわりと笑って口に出した彼女の回答に、安心した半面、胸がチクリと痛むのを感じる。
『どうかした?』
「ううん......ただ、家族を大切に思っているAちゃんがそういう風に言うってことは、夢野先生もAちゃんにとって大切なんだろうなって考えていたんだよ」
一瞬きょとんとするが、彼女はすぐに笑顔になった。
『あー......はは、そう言われるとそうなのかもね』
「......うん」
僕は何をしているんだろう。自分で墓穴を掘って、変に傷ついて。
『でも私にとっては、麻天狼の皆も大切だよ。こんな私を知っても、優しくしてくれるんだから』
麻天狼の皆、か。
「それはよかった。独歩くんと先生はいい人だって保証するよ。もちろん、Aちゃんも僕にとっては大切さ」
もちろん本心。
だけど、もっと欲を言うなら
君の特別になりたい、なんて
おかしいな、この姿で子猫ちゃんを口説くなんて
朝飯前のはずだったのに。
『まーたそんなこと言っちゃって。同じホストとして、俺も負けていられないな』
目を細めて笑う隣の彼女だけは
なんだか、思うようにいかないな。
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あかつき(プロフ) - ぽぴらさん» わー!!お返事遅くなってすいません。。えっ!びっくりです!笑嬉しいです…!笑あとこいちゃんめっちゃかわいかたかっこいいです、、、。 楽しみにしてます〜〜!! (2020年4月25日 21時) (レス) id: 15e64c1d44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - あかつきさん» コメントありがとうございます。拙い文ですが、そんな風に言っていただけてとても光栄です!実はあかつきさんの作品、閲覧させていただいてます笑 乱数の妹ちゃん、凄くかわいいなぁと思いながら読んでます(''*) 更新頑張ります〜! (2020年4月11日 2時) (レス) id: 7328f92863 (このIDを非表示/違反報告)
あかつき(プロフ) - 感想失礼します。すごく面白いです。一つ一つの描写だったりが上手で読んでいて楽しいです。私も小説を書いているのですが、文才が追い付かず、本当に尊敬しています。これからも更新楽しみにしています。 (2020年4月11日 1時) (レス) id: 15e64c1d44 (このIDを非表示/違反報告)
梓 桜 。(プロフ) - お忙しい中わざわざお返事頂けるなんて恐縮です( ; ; )このご時世ですから落ち着かれている時にゆっくり更新で構いません!更新ありがとうございます。゚(゚´▽`゚)゚。 (2020年4月4日 2時) (レス) id: f31cec74f3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - 梓 桜 。さん» コメントありがとうございます。そんなふうに言っていただけて嬉しい限りです(´˘`*) 遅筆ですが、気長に更新待ってくださるとありがたいです、これからもよろしくお願いします´_ _) (2020年4月3日 13時) (レス) id: d4ba406946 (このIDを非表示/違反報告)
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