シンジュクNo.2ホスト系女子。【伊弉冉一二三】

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外に出ると、陽はすっかり傾き始めていた。


オレンジ色の夕焼けが眩しくて、一二三の様子がよくわからない。


ただひたすらに、スタスタと人気のない道を進んでいく。

......ちょっと待って、これ勢いだけで歩いてない？



『ちょ、一二三待って、すとーっぷ！』


繋がれた手と反対の手でグッと服の裾を引っ張ると、羽織っていたスーツが軽く肩下までズルリと脱げる。



「うわわ、何」


パッと振り返った一二三と目が合う。

最近少しずつ見慣れてきた方の一二三。まだちょっと新鮮。


『や、何じゃなくて、どこに行くつもり？』


ずかずかと歩いて、結構なところまで来たけど。


「どこって......


どこだろう？」


だよね......ここ、駅と方向逆だし。


『バカ......』


ぽろっと出た言葉に、握られていた手の力が少し強まる。


「ばっ......！バカはAちゃんもだろっ！あんな......男の前でボーッとしちゃってさ！挙げ句触られかけてっし、めちゃくちゃ危ねぇじゃん！」


『っ、え』


決して責められているわけじゃないことは分かったが、突然の強めな言葉に少し肩が跳ねる。

が、私の反応を見た彼はサァッと顔を青くした。


「あっ、ごっ、ごめん！俺っち強く言い過ぎちった......」

眉をひそめて申し訳なさそうに私の様子を伺う一二三。


改めて思うけど、ホストの時とは全然違うよなぁ......
何て言うか、やっぱり子犬？


『大丈夫、私こそごめんね』

なるべく安心させられるように、優しく話す。

ホッとしたようにうつむいた一二三が、ふと繋いだままの手に気づく。


「あっ、やべ、マジごめんっ」


ピャッと両手をあげて、わたわたする一二三。
少しずつ耳が赤く染まる。


あー......ダメだ、笑う。


『ふ、』


「ちょ、笑うなってぇ」


恥ずかしそうにしながらも、彼はへにゃりと笑った。




「......A、ちゃん」


『ん？』


名前を呼ばれるのにもだいぶ慣れてきたなぁ。

そんなことを思いながら、次の言葉を待つ。


「あー......えっと！また今日の分出直さね？俺っち、今度は違う期間限定のスイーツがあるとこ探しとくし！」


お出かけの約束。

前の私だったら、乗り気にはならなかっただろうお誘い。


でも今は、ちょっとしたお誘いでも嬉しくて。



『いいの？楽しみ』


それは、友達と出かけるのがなのか

それとも、彼のお誘いだからなのか。



「やった」と小さく呟く彼を見て、私の鼓動はほんのすこし高鳴ったような気がした。




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