シンジュクNo.2ホスト系女子。【伊弉冉一二三】

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『......私がこの業界に入ったのは、15の頃』


改めて椅子に座って向かい合う彼女と、俺、それから独歩。

これも何かの縁だから、と彼女が口にしたことから、二人で聞くことにした。


「15......」

思わず繰り返して確認する。

その数字を聞いて、恐ろしく壮絶な人生を歩んできたのだろうと悟った。



彼女の父は、彼女が中学に上がる年に
抱え込んだ借金を遺して、とんだ。

そして彼女の母は毎日毎日、働いていた。
海外に飛ぶことも珍しくなかった。



『迷惑をかけないように、三年間は誰にも劣らないくらい勉強をして......身の上の事も全てこなしてた。出来ることはとにかく何でも自分で......』


そうすれば、母はきっと喜んでくれる。

いつか、頭を撫でて褒めてくれる。





だけど受験期にかかった頃、突として事は起こった。


『その母が、事故にあったの。意識不明の、重体だって』



ごくりと、息を呑む。

彼女の瞳が、哀しそうに揺らいだ。



『今もまだ、意識は戻ってない。身寄りもなかった私は、借金、生活費、そして入院費と全て一人で背負うことになった』


そこから身分を誤魔化すようになったこと。
色々な方法で働いていたこと。

......それでも、生きるに精一杯で全く足りなかったこと。



『そんなある日、居酒屋で働いていた私をキャバクラのオーナーが呼び出したの』


「キャバクラ......」


Aちゃん、キャバ嬢もしていたのか......しかもスカウト？

生きるためとはいえ、ちょっと複雑。



『えっと......数年前にシブヤのほうで話題になってた、Renってキャバ嬢知らない？』


「れんって、この業界ではかなり有名だよな〜......たった半年で売り上げ数字を桁外れにぶっ飛ばした子が、突然行方を眩ませた、ってやつだろ？」


あぁ......と思い出したように独歩が声を出す。

まぁ、ディビジョンが違うからなぁ。その手の職に関わっていないと知らないやつもいるかもしんねーけど。


『それ、私なんだよね』


「......まじ？」


『うん.....あの頃は必死で、周りが見えてなかった。その結果、元々売れてた同業の子に妬みを買っちゃって......色々あったけど、要は歳がバレてクビ』



キャバ嬢としても優れた業績を残していたんだな......まぁ、わからなくはないけどさあ。


『だけど私は、この業界なら全てうまくいくと確信した。一度身元がわれたから、女としては無理だったんだけど......』


「......それで、ホストか」


『そういうことに、なるかな』




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