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『ナンバー1ホストって、本職は三ツ星シェフだっけ?』
感動したような、嬉しそうな顔で彼は、空になった皿を見つめながら次々と感想をこぼした。
「すごく独特な誉め言葉だな......」
「んはは!こいちゃんおもしれ〜」
そう言いながらも、相変わらず頬がゆるゆるの一二三。
いやまぁ、こいつの頬はいつも緩いが......
わかる。俺には耳が赤いのもよくわかるぞ、一二三。
そんな一二三の様子に、存外気づかない様子のこいさん。
よほど料理が美味かったのか、ぽこぽこと出てくる誉め言葉たちに
さすがの一二三も限界そうだ。
「あー、俺っちそろそろ片付ける!独歩ちん、風呂沸かしてあるから先浸かって!」
反らしたな......まぁ風呂はありがたくもらうか。
『食器洗いは俺がするから、一二三は休んでていいよ』
「え、こいちゃんは仕事終わりで疲れてんだろ?俺っちやるから......」
『美味しいもの食べさせてくれたお礼だって!こう見えても家事はやる方だし』
あいつが押されるの、珍しいな。
まぁ後は任せて、俺は風呂でゆっくりさせてもらうとしよう。
そう呑気に、俺はその場を後にした。
・
カウンターの向こうで、手際よく皿洗いをするこいちゃん。
スーツ脱いだ後ろ姿、普通に超華奢だよなぁ......
「......ん?」
そんなことを考えながらぼんやりと眺めていると、ふわふわとした白銀の髪の隙間から
ふと、何か光ったものが見えた気がした。
ほんとに何となく、それが気になったから手を伸ばしただけだった。
細い首筋に、そっと指が触れた刹那の出来事。
『ひゃ、っ......』
びくりと肩が跳ねると同時に、男とは思いがたい声と、皿の割れる音。
バッと振り返った彼の、焦りに満ちた表情。
『っ、な』
「ごっ、ごめん!」
こいちゃんが口を開く前に、慌てて謝罪する。
恥ずかしいのも、焦るべきなのも俺じゃない。
それでも、バクバクと鳴る心臓が止まない。
"彼女"の微かに潤んだ瞳は、困惑したように揺らぐ。
そうだ。目の前にいるのは、"彼"なんかじゃない。
そんな薄々としていたものが、確信へと変わった。
だけど、いつも女の子を目の当たりにすると襲うようにくる恐怖は、少しも感じることはない。
代わりにあるのは不謹慎にも、安堵と
とうにわからなくなったはずの、心が溶けるような感覚だ。
・
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あかつき(プロフ) - ぽぴらさん» わー!!お返事遅くなってすいません。。えっ!びっくりです!笑嬉しいです…!笑あとこいちゃんめっちゃかわいかたかっこいいです、、、。 楽しみにしてます〜〜!! (2020年4月25日 21時) (レス) id: 15e64c1d44 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - あかつきさん» コメントありがとうございます。拙い文ですが、そんな風に言っていただけてとても光栄です!実はあかつきさんの作品、閲覧させていただいてます笑 乱数の妹ちゃん、凄くかわいいなぁと思いながら読んでます(''*) 更新頑張ります〜! (2020年4月11日 2時) (レス) id: 7328f92863 (このIDを非表示/違反報告)
あかつき(プロフ) - 感想失礼します。すごく面白いです。一つ一つの描写だったりが上手で読んでいて楽しいです。私も小説を書いているのですが、文才が追い付かず、本当に尊敬しています。これからも更新楽しみにしています。 (2020年4月11日 1時) (レス) id: 15e64c1d44 (このIDを非表示/違反報告)
梓 桜 。(プロフ) - お忙しい中わざわざお返事頂けるなんて恐縮です( ; ; )このご時世ですから落ち着かれている時にゆっくり更新で構いません!更新ありがとうございます。゚(゚´▽`゚)゚。 (2020年4月4日 2時) (レス) id: f31cec74f3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - 梓 桜 。さん» コメントありがとうございます。そんなふうに言っていただけて嬉しい限りです(´˘`*) 遅筆ですが、気長に更新待ってくださるとありがたいです、これからもよろしくお願いします´_ _) (2020年4月3日 13時) (レス) id: d4ba406946 (このIDを非表示/違反報告)
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