過呼吸多発症【探偵チームKZ】

１３『自由より偽善を取った』 ページ13

お兄ちゃんは凄いなー偉いなー。

そう思うけれど追いつこうとも思わないし、真似しようとすらしない。
何処かで全部諦めて諦めて、諦める癖に後悔して自分を責める。

何事も中途半端だった。

バレエを習えば才能があるって言われた。
でも、それは初見だけの才能。
私の才能は、何かを説明されてすぐ頭の中にインプット出来るだけ。

だから先生が言った事を実現できる。

でも、はいどうぞって、自分で進んでいいよって言われたら何にも出来ない。

だって、進む時に走る時に使う酸素がないから。


人から必要される分だけ酸素を供給して。

人が過剰に求める分は捨ててしまう。


二酸化炭素みたいに。


「私が言わなきゃ何にも出来ないの？言う前にやりなさい、動きなさい。もう中学生でしょ」


分からないんだ。

勝手に背中を押された後のリレーのコース。
ねえ、私に自由に動けって言わないで。

小さい頃からエゴで縛ってきたんだから、今更困る。


自分の好きなようにって何。

急に命令が聞こえなくなった。
ここから動いても平気？箸を持っても平気？咀嚼しても平気？


「お兄ちゃんを見習って。ほら、何も言われなくたって皿洗いしてくれてる」


何で、何も言われてないのにやるの。
だって、私何も。


「今日の夕飯何がいい？」

「んー、何でもいい」

「何でもいいが一番困るのよ」


好きなものがないから分かんないや。

だって、そうでしょ？


『Aは良い子ね〜、お母さんの言う事をちゃんと聞いてくれる』


ほら。


突然の掌返し。


『うん、ママのこと大好きだもん！』


カチッ____


「なんだ……っ、私、も」


彼奴らと一緒。

所詮、偽善者じゃん。


「死ねばいいのに」


理不尽な自由という名の鈍器。









「ねえ、カッターの刃、危ないよ」



薄い水の膜が張った瞳に、綺麗な美少年が映った。






「た、すくさん……？」


苗字なんか覚えちゃいない。


「なんでカッター持ってるの？清水さん」


嗚呼、無理だな。

こういう綺麗過ぎる人。



「自傷行為の為ですが」


口のチャックが全開な私も同様に。

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