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「いい?あくまで仮定だから」

《まぁでも、チョロちゃんのそういうのはよく当たるからな〜》

「チョロちゃん言うな」


少しおどけた声を出す長男をギッ、とひと睨みしたチョロ松は再び雑魚の群れへと飛び込んだ。

しかし、そこは先程までとは少し違った雰囲気を持っている。

……自分の兄弟の気迫で。



《……じゃあ、まぁ……

気ィ引き締めろ、手前ら》









『……はっ、は……っ』


走る。走る。走る。

こんなに全力で走ったのなんて初めてかもしれない。

息が上がる。
苦しい。
そんなこと言ってられない。

ただただ、Aの頭の中は焦りで埋め尽くされていた。


『多分……こっち……っ!』


勘に任せて角を曲がると、少し遠目に喧騒が聞こえてきた。

合ってた、良かった。

そう思うのと同時に、一つの懸念が頭を過ぎる。


『……ど、しよ、私』


Aはどくり、と胸の奥が脈打つのを感じた。

私が今何のために走ってきたのか、私が一番分かってるはずなのに、それでも。

ガクガクと膝が笑う。
震えて真っ直ぐ立つことができない。

ここまで来て、どうして。

カラン、と軽快な音を立てて、おそ松から受け取ったナイフが足元に転がった。

銀色の刃が、妖しく光る。


『……そうだよ、そうだ』


Aは震える手でそのナイフを握った。
何かに、縋りつくように。

どくり、どくり、激しく脈を打つ。

瞳を閉じて、ナイフを胸の前で両手で包む。


『……思い出せ、私の理由を』


ふぅ、と細く息を吐いたAの耳には、既に遠くに聞こえていた喧騒は入らない。

ゆっくりと伏せていた瞳を開く。


『私は、────ために来たんだ』


月光がAの髪を照らす。



その瞳には、もう光は宿っていなかった。

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設定タグ:おそ松さん , マフィア松 , ななし   
作品ジャンル:アニメ
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サクラ - とてもよかったです!その後話が欲しいです! (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - おそ松と結ばれて欲しかった… (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
yuttan(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ななし2号さんの作品好きです!だいぶ遅れてしまいましたが…本当におめでとうございます! (2016年7月27日 20時) (レス) id: a64d1d73ae (このIDを非表示/違反報告)
ななし2号(プロフ) - 丸餅さん» コメントありがとうございます!更新滞ることもありましたが最後まで読んでいただけて嬉しいです!番外編書き終わり次第新作も出していこうと思うのでよろしくお願いします! (2016年6月9日 7時) (レス) id: 8f8356ff37 (このIDを非表示/違反報告)
丸餅(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ほんともう素敵すぎて…!!新作も楽しみにしてます!丸餅でしたー!! (2016年6月5日 16時) (レス) id: 404e0cc21b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ななし x他2人 | 作成日時:2016年3月8日 13時

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