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「……俺は、そんなこと思わねえけどな」
『え、』
その、重く重く続いた沈黙を引き裂いたのは赤。
おそ松だった。
驚いて顔を上げたAの、兄弟達の目線の先には、呑気に煙草を蒸しているおそ松の姿が映る。
『なん、で』
「いや、なんでもなにもよ。俺らはAがいなけりゃあの岸辺舞莉夏に殺されてただろうし、他にも任務で助けられてんだろ?ハッキングとかよ。それで化物って罵って遠ざけることはねえし、むしろ大事な仲間だよ」
ペラペラと出てくるおそ松の言葉は、Aを柔らかく包んだ。
大事な仲間、そう言ってくれることが嬉しくて。
でも、それでも。
『私は化物だよ……』
言い聞かせた。
彼らに全部話して、そして言うべき言葉はすべて理解している筈だけれど、Aは彼らと同じではない。
その事実が、遠く遠ざける。
「だーもう!!わからず屋だな!!」
突然声を荒らげたおそ松にビクッと肩を震わせた兄弟達を横目に、おそ松は乱暴に煙草の火を消した。
そして、がしがしと頭を掻き毟ると、ガタリと音を立ててAの方へと歩み寄る。
「いいか、よく聞けよ!
お前が自分のことどんな風に評価してるかなんて知ったこっちゃねえけどよ!俺は!俺らは!
お前を高く評価して!!必要としてんだよ!!」
『……っ!』
掴まれた肩は力強く。
まるで、Aをそこにつなぎ止めるための1本の綱のような、しかし安心させるような強さが、優しさがあった。
一番欲しかった言葉。
しかし、その優しさがとてつもなく痛い。
『……でも!わたしは……!
私は、人間じゃないんだよ!!そんな奴が君たちと、こんなに優しい君たちと関わっていいはずがなかったんだ
!!』
「そんなの知るか!!俺達が勝手にお前と関わったんだからお前は素直に俺達と関わればいいんだよ!!
親がどうした、岸辺舞莉夏がどうした!!お前はお前だろ!!!」
知らない間に、Aの頬を涙が流れた。
ここ数十年流さなかった雫。
『何その子供みたいな……!!
君に何がわかるっていうの!!?私はわたし!?よく言うよ!!私なんて、そもそも生まれたのがまちが……』
バシン、と鈍い打音が響いた。
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サクラ - とてもよかったです!その後話が欲しいです! (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - おそ松と結ばれて欲しかった… (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
yuttan(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ななし2号さんの作品好きです!だいぶ遅れてしまいましたが…本当におめでとうございます! (2016年7月27日 20時) (レス) id: a64d1d73ae (このIDを非表示/違反報告)
ななし2号(プロフ) - 丸餅さん» コメントありがとうございます!更新滞ることもありましたが最後まで読んでいただけて嬉しいです!番外編書き終わり次第新作も出していこうと思うのでよろしくお願いします! (2016年6月9日 7時) (レス) id: 8f8356ff37 (このIDを非表示/違反報告)
丸餅(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ほんともう素敵すぎて…!!新作も楽しみにしてます!丸餅でしたー!! (2016年6月5日 16時) (レス) id: 404e0cc21b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななし x他2人 | 作成日時:2016年3月8日 13時