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『……へへ、気にしなくていいよ。
さて、質問を続けようか』
Aはまた顔をあげてニコリと口角を上げた。
それは、無理やり上げているようにもみえて。
『(約束、したのになあ)』
思い出してはならなかったのかもしれない。
必要とされる恐怖を。そして、必要とされない恐怖を。
必要とされなかった、舞莉夏の苦しみを。
それでも必要とされたかった。
怖くても苦しくても、自分に存在する意義を、意味を与えて欲しかった。
だが、Aはその他にも思い出してしまった。
……自分は、人間じゃない。
確かに舞莉夏によって与えられた心は、あたかもAが人間のように振る舞えた唯一の救い。
その心があったとしても、Aは人体実験によって産み出されたいわば化物。
捨てられるんじゃないのか?
そんな微かに芽生えた不安を押しつぶすように、Aは口角を上げて必死に笑った。
「……じゃあ、僕いいかな、質問」
そう言っておず、と手を上げたのはトド松だった。
Aはそちらに顔を向けてにこり、と笑うと、トド松は目線を動かしながらじゃあ、と口を開いた。
「Aちゃんは、さ。どう思ってるのかな……って、その、自分のこと……」
心臓を掴まれたような気分だった。
その質問が何を意味するのかなんて理解出来ないほどAの頭は悪くない。
震える両手を握り締めて、言葉を紡ぐことを拒否しようとする唇を無理やり動かして、Aは笑った。
そして、はっきりと。
『──化物だと思ってるよ』
その自覚はあるし、いつでも棄ててくれて構わない。
そんな意味を込めて、精一杯笑った。
『ば』『け』『も』『の』。
確かに一文字ずつ、丁寧に発したAの声はとても透き通って彼らを突き抜けた。
とても重いその一言がAからの強い拒絶を確かに感じさせる。
でも、どこか、悲しくて。
重い沈黙が落ちた。
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サクラ - とてもよかったです!その後話が欲しいです! (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - おそ松と結ばれて欲しかった… (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
yuttan(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ななし2号さんの作品好きです!だいぶ遅れてしまいましたが…本当におめでとうございます! (2016年7月27日 20時) (レス) id: a64d1d73ae (このIDを非表示/違反報告)
ななし2号(プロフ) - 丸餅さん» コメントありがとうございます!更新滞ることもありましたが最後まで読んでいただけて嬉しいです!番外編書き終わり次第新作も出していこうと思うのでよろしくお願いします! (2016年6月9日 7時) (レス) id: 8f8356ff37 (このIDを非表示/違反報告)
丸餅(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ほんともう素敵すぎて…!!新作も楽しみにしてます!丸餅でしたー!! (2016年6月5日 16時) (レス) id: 404e0cc21b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななし x他2人 | 作成日時:2016年3月8日 13時