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『……そこからは、君たちの知っている通り』
Aは伏せていた目をゆっくりと開き、目の前に並ぶ彼ら6人を見渡した。
辛そうな顔をする者、無関心そうな表情を見せる者、はたまたどんな感情を持っているのか見当もつかない者。
三者三様な反応を見せる彼らを、Aは羨ましいとさえ思った。
Aはそんな彼らの中の1人、緑の彼に真っ直ぐ、そしてピンと張った糸を切るかのように指を差す。
『君が、舞莉夏を撃ち殺して。
……父が、その死体と私を使って、アレを生み出した。その様は、多分君らもよく知ってるはず』
その言葉に、当時のことを思い出したのかはAには定かではないが、彼らは各々顔をしかめた。
なにも、実験を受けたのは舞莉夏だけではない。
不完全な、もう人とも呼べない
『……欠陥品から欠陥品を抜いても欠陥品しかできないっていうのにね』
Aは祈るように握っている両手を胸元に当てた。
こころ、なんてそんな漠然としたものだけれど、それでも確かにあるのがこころ。
無理やり剥ぎ取られて、無理やり繋ぎ合わされた。
Aと舞莉夏は互いが互いに自らを分け合っていたからなのか、より強く相手を、片割れを探していた。
『わたしは舞莉夏だから……』
だから、だめなの。
手はそのまま胸元に置きながら、目をぎゅっと固く閉じたAはうわ言のように『だめ、だめだからだめなの』と、何かを否定した。
何を否定しているのか。
Aが一番分からなくて、一番分かっている。
心の奥底で、Aがずっとずっと求めていて、ずっとずっと。
『だから、私は………………、だめなの』
ボソリと呟いた声はAの口の中でこだまして、彼らの耳に届く事は無かった。
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サクラ - とてもよかったです!その後話が欲しいです! (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - おそ松と結ばれて欲しかった… (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
yuttan(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ななし2号さんの作品好きです!だいぶ遅れてしまいましたが…本当におめでとうございます! (2016年7月27日 20時) (レス) id: a64d1d73ae (このIDを非表示/違反報告)
ななし2号(プロフ) - 丸餅さん» コメントありがとうございます!更新滞ることもありましたが最後まで読んでいただけて嬉しいです!番外編書き終わり次第新作も出していこうと思うのでよろしくお願いします! (2016年6月9日 7時) (レス) id: 8f8356ff37 (このIDを非表示/違反報告)
丸餅(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ほんともう素敵すぎて…!!新作も楽しみにしてます!丸餅でしたー!! (2016年6月5日 16時) (レス) id: 404e0cc21b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななし x他2人 | 作成日時:2016年3月8日 13時