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頭がふらふらする。
今、何をしてたんだっけ。
そうだ。舞莉夏を殺したんだった。
……まりかを、ころした?
そこまで思考が追い付いてから、Aは急速に冷静さを喪っていく。
しかし、それが表に出ないのはやはり、Aが
《……だから言ったのに》
不意に、Aの頭の中に声が響いた。
それは、紛れもなくA自身のもので。
ボロボロと、Aの中心にあった大事なモノだったであろう何かが崩れ去っていく。
ばらばらと剥がれ落ちていくソレらを、Aはただただ見つめているだけだった。
《いいの?追いかけなくて》
『うん。まぁね』
《貴女の大切なモノでしょう?》
『そうみたいなんだけどね』
分からないんだよ。もう。
そう、Aは寂しそうに自嘲的な笑みを浮かべる。
今のAには、既に自分が何者で、何が必要で、どうしたらいいのか。それらがまったく分からなくなってしまった。
それは、今まで不安定だった舞莉夏を屠ったことによりかろうじて繋がっていたAの糸が切れてしまったことを意味している。
歯車は、一つ狂えば全てが狂う。
奇跡的に噛み合っていたAの歯車は、“岸辺舞莉夏”というたったひとりの女性によって支えられていた。
その彼女を自らの手で喪わせたことで、支えは無くなり、倒れてしまったのだった。
汚い破片のように、はたまた美麗な花弁のように流れ落ちていくその何かの残骸を見つめていると、どこからかため息のような吐息が漏れる音がAの鼓膜を掠めた。
《もう、戻るつもりはないの?》
『戻れないよ。私は既に人じゃない』
《馬鹿な私》
『…………否定はできないなぁ…………』
また一つ、乾いた笑い声を響かせる。
《本当に馬鹿。分かっているでしょう?》
『……ホントに、敵わない』
《ふふ、私は貴女だから》
声は続けた。
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サクラ - とてもよかったです!その後話が欲しいです! (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - おそ松と結ばれて欲しかった… (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
yuttan(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ななし2号さんの作品好きです!だいぶ遅れてしまいましたが…本当におめでとうございます! (2016年7月27日 20時) (レス) id: a64d1d73ae (このIDを非表示/違反報告)
ななし2号(プロフ) - 丸餅さん» コメントありがとうございます!更新滞ることもありましたが最後まで読んでいただけて嬉しいです!番外編書き終わり次第新作も出していこうと思うのでよろしくお願いします! (2016年6月9日 7時) (レス) id: 8f8356ff37 (このIDを非表示/違反報告)
丸餅(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ほんともう素敵すぎて…!!新作も楽しみにしてます!丸餅でしたー!! (2016年6月5日 16時) (レス) id: 404e0cc21b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななし x他2人 | 作成日時:2016年3月8日 13時