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「お前……っ!なんで!!」


怒声にも似た声がおそ松から発せられる。

しかし、声の主……Aは、その声をへらりと聞き流して口角を上げた。


『なんでって、こっちのセリフだよ?なんで置いてくのさ』

「そんなの……っ」

『私のためって?』


その声は異様に冷たく重く響いた。

Aはおそ松に、蹲っているチョロ松に、カラ松と十四松に目をやった後、目の前の……自分によく似た彼女へと視線を向けた。

その人とは呼べない醜い彼女を見て、Aはゆるりと口元に笑みを浮かべ、優しい声色で囁く。


『……久しぶりだね。
ごめんね、思い出したのは一か月前なんだけど』


寂しそうに、悲しそうに目を伏せたAには驚きに満ちた目で見てくる周りの彼らは映らない。


『私が分からないわけないじゃん。ずっと待ってた。
でも、私じゃなかったんだよね。ごめんね、私のせいで。私のせいなの』


自分のせいだ、と繰り返すAの声をインカムを通じて聞いていた一松は顔を顰めた。

多分、いつも一松が自分を卑下して言うのとはレベルが違うのだろうけれど、一松は全て自分で背負う辛さを知っている。

それに、レベルが違うということは背負うモノのレベルも違うということだ。

計り知れない重圧を、Aは自ら進んで背負っているということに、そしてそれの助けになれないことに、一松は唇を噛み締めた。


『でもね、私知ってるから。助ける方法を。
だから、もうそんな体で苦しむ必要もないんだよ』


Aは恍惚とした表情でナイフを眺めると、そのまま真っ直ぐ目の前の彼女へと向けた。

と、それに気付いたカラ松が慌てて声を上げる。


「まさか、1人で戦うつもりなのか!?」

『大丈夫。……私のせいだから、私がやるの』


Aは諦めにも似た笑みを見せると、また目の前の彼女へと視線を戻して柔らかく笑った。

その笑みはどこか狂気に満ちていて、その瞳には光が宿っていない。

そして、ナイフを片手で逆刃に持つ。


『……おやすみなさい。







────舞莉夏』


次の瞬間、奇声と聞き紛うような悲鳴が辺りに響き渡った。

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設定タグ:おそ松さん , マフィア松 , ななし   
作品ジャンル:アニメ
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サクラ - とてもよかったです!その後話が欲しいです! (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - おそ松と結ばれて欲しかった… (2017年12月25日 11時) (レス) id: 82bd22f655 (このIDを非表示/違反報告)
yuttan(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ななし2号さんの作品好きです!だいぶ遅れてしまいましたが…本当におめでとうございます! (2016年7月27日 20時) (レス) id: a64d1d73ae (このIDを非表示/違反報告)
ななし2号(プロフ) - 丸餅さん» コメントありがとうございます!更新滞ることもありましたが最後まで読んでいただけて嬉しいです!番外編書き終わり次第新作も出していこうと思うのでよろしくお願いします! (2016年6月9日 7時) (レス) id: 8f8356ff37 (このIDを非表示/違反報告)
丸餅(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ほんともう素敵すぎて…!!新作も楽しみにしてます!丸餅でしたー!! (2016年6月5日 16時) (レス) id: 404e0cc21b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ななし x他2人 | 作成日時:2016年3月8日 13時

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