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「泣いてても、貴方に私を慰めることはできないんですよ。」
[どうして?結婚指輪、してないです。]


私の左手と、彼の左手。
両方が見えるような位置に手を持ち上げられる。

そんなこと気にする人だっけ、この人。


「普段してないだけかも。」
[そうなんですか?]

確信を得ている。
そういう顔だ。
相変わらず癪に触る。
のくせやっぱり様になるんだから尚更嫌だ。

「、持ってません。」
[でしょうね。]


イラっとしたのは仕方ないだろう。
でしょうねってなんだでしょうねって。
これでもCIAの中では大人気なんだぞ。
おじさまに!←

そんな私の心の中の葛藤を知ってか知らずか。
少しおかしげに笑った彼が口を開く。

[VIPが来ると分かった時、手術室に入る時、営倉に来てくれた時。]

[記憶とは違った。カルテについて知ってること。]

[こっそり銃口に近い位置を常にキープし手術室へ誘導。その後は僕たちの邪魔にならないように致命傷を避けた位置取りをしつつ、向こうが君を牽制できる位置にいた。]

[機転を利かせ、あんな風に可愛らしく真っ直ぐに、本気でそう思っているという風に喋れるなんてことは知らなかった。]

[それに、あの子供たちのこと。きちんと考えて、辛い決断をした。そんなに強くなってるなんて、知らなかった。]

[時間と努力。それがここまで君を成長させたんだろうと知るには十分すぎた。]


そんな君が、彼氏を作ってる余裕があったとは思えない。
そこまで言い切られては、こっちは涙をこらえるのにいっぱいいっぱいだ。
見てたの、とか思うことはあったけど、とにかく今は。

泣かないことに全身全霊をかけてやろう。
ここ8年、涙を流さないで生きて来た。
泣いたのは、あの日が最後だ。
久々の涙がまたこの人関連だなんて嫌だ。


[よく頑張った。]
「っ、」


ぐ、っと唇を噛みしめる。
この人は私の想い人。
けれどそれと同時に、何度か立場は違えど一緒に作戦を行使した戦友であり上司でもある。
3つも年上のこの人が。
あいも変わらず頼もしくかっこいいことを、心の底から嬉しく思うと同時に、とても辛く思う。

「また会えると思ってなかった。私の尊敬する先輩に。お気をつけて。」
[あなたも。]

ゆるり、手が私の頭を撫ぜて離れていく。
崖から離れていく彼とは反対に、私は崖へ。
腰を下ろして、長いため息を吐いた。

相変わらず、

「罪づくりな人。」

青い海を眺めているのに、視界を覆うのはあの人の顔だった。

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作者名:ヒヨコ | 作成日時:2021年1月17日 21時

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