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渡「っあー、むり、ぜんっぜんわかんねぇ」
岩「翔太、すぐ答え見んなよ」
渡「もうこうなったら答え見て覚えるしかねーだろ。ってかなんで照がいんだよ、おまえ別に補習がかかってるわけでもないのに」
岩「ついで?みたいな。お前ら2人の相手すんのはAちゃん大変かと思って」
…なんだ、これ。
いま私はとんでもなくおかしい状況の中にいる。
学校帰り、辰哉くんに捕まり、駅前のちょっと広めのファミレスまで連行された私。
テーブルを囲むように一緒に座っているのは、私と辰哉くんと。それから彼の友達の渡辺くんと岩本くん。
実は昨日、辰哉くんにお願いされて彼らの試験勉強の手伝いをすることになったわけなのだが。
放課後に誰かとこういうところにいるのは初めてだし、あきらかに私浮いてるし。
あの時は彼の圧に押されて思わずイエスといってしまったけれど、やっぱり断ればよかったかな、なんて。
深「Aー、これどうやんの?」
『え?…あぁ、えっと、』
改めてこの不思議な光景を眺めながら頭を悩ませていれば、隣に座る辰哉くんがふいに私の腕をつついた。
問題集をふたりの間に広げて、わたしを見る彼の瞳に心臓が不規則になる。
『…どれ?』
深「ここー、最初から全然わかんねーの」
彼が指さしたのは、基礎中の基礎、初歩の初歩ってところで。
授業はほとんど寝てたーとかさっき言ってたからまあ、かなりの状況なんだろうなとは覚悟していたけれどまさかここまでとは。
…そもそも私には、この状態なのに1週間前まで何もしないでいられる気がしれない。
『…えっと、これは、』
深「んー」
『教科書のこの辺をまず読んで、』
深「んー」
『それで、……って、聞いてる?』
なんか彼の返答と噛み合ってない感じがして、いったん顔をあげたら、正直全く集中していなさそうなふわふわした表情の辰哉くんとばっちり目が合う。
深「聞いてるよ?」
『……、じゃあいまわたし何してって言った?』
深「え?あーっと、」
『…ほら、きいてないじゃん』
はあっと溜息をつきながら彼をちょっとだけ睨むと、「ごめん、ちゃんと聞くから!」と慌てて背筋を伸ばし始めた。
大げさなそのしぐさがなんかちょっと面白い。
思わず緩みかけた頬。それに気づいて今度は私の方が慌てて表情を元に戻す。
だめだ、だめ。勉強を教えるためだけに来たんだから、気を緩めてる暇はない。
…早いところ終わらせて帰らなきゃ。
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こゆき(プロフ) - さゆさん» コメントありがとうございます…!更新頑張ります!! (2020年11月29日 10時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 楽しいです!更新楽しみにしてます(^^) (2020年11月26日 23時) (レス) id: 04307595de (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - (名前)ひなさん» いつもありがとうございます…!自己満の拙い作品ですが、好きだと言っていただけて本当に嬉しいです!さらに楽しんでいただけるよう、更新頑張ります…! (2020年10月18日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)ひな(プロフ) - うわあ新しい作品もめちゃめちゃきゅんきゅんします…!!ほんとにこゆきさんの小説好きすぎて…毎日見てます!!しぇあはうすの住人もハニーシュガーの誘惑も楽しみにしてます^^ (2020年10月12日 16時) (レス) id: cc80ef896f (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - さーたんさん» コメントありがとうございます…!描写とても考えながら書いているので、そのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくお願いします…! (2020年10月11日 21時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こゆき | 作成日時:2020年10月5日 23時