ハニーシュガーの誘惑【紫】

33. ページ33

>Fukazawa side.



岩「ふっか？どうした？」


校舎の窓に視線を向けていた俺の隣、照が同じように目線を上げる。



『ん？ああ、いや、なんかいま一瞬Aが見えた気がしたから』

渡「え？いねーじゃん、」

『気のせいかも』


一瞬いたような気がしたんだけどな。

あの二階の左から三番目の窓。

いま見たらだれもいないし、もしかしたらその隣の窓からこっち見てる子たちの視線だったのかもしれない。

「ふっかー」ってでかい声でこっちに向かって手振っている女の子に、とりあえず手を振り返す。



岩「おまえAちゃんのこと探しすぎだろ笑」

『レーダーついてっから。見つけた時に追いかけねーとすぐいなくなっちゃうんだもん、あいつ』


おれは学んだのだ。Aは待っていてもやってきてはくれないから、だから俺が追いかけないといけないって。

余裕ぶってる暇がないってこと。足掻いて捕まえなきゃ、すぐいなくなっちゃう。




渡「そういやさ」

Aがいた気がした二階の窓をぼーっと眺めていた俺の横で、翔太が思い出したように声を上げた。


渡「2組の女子にカラオケ行こって誘われたんだけど、お前らきょう暇？」

『カラオケ？』

渡「そ、けっこう前から誘われてて流石に断れねーんだよな」


ぐしゃりと面倒そうに髪を乱した翔太が、「断ったらなに言われるかわかんねーし」と空を仰ぐ。

2組の女子、ねぇ。俺、知り合いなのか？

わかんないけど、今日はAのこと捕まえて一緒に帰ろうと思ってたからな、


今回は断っとく────「あと一週間で中間なのにそんなことしてて大丈夫なのかよ」



「『え？』」

岩「え？じゃなくて」



忘れてたわけ？と笑った照に固まる俺と翔太。



……中間？

ナンノコト？



.

34.→←32.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す