三十六歩目 ページ38
二郎side
急にAちゃんの手が離れた
その途端彼女は道路側に倒れ込んでしまう
誰かに押されたのか後ろを振り返っても誰もいない
だが物陰に人が隠れているのが分かった
するとブレーキ音が近づいてくるのが聞こえ、その方向を見れば車はAちゃんの目の前に迫っていてた
「危ないAちゃん！！」
俺の叫びも大きな音にかき消されて彼女に届くこと無く車は猛スピードで突き抜けていった
車が通り過ぎた後、目の前には頭から血を流したAちゃんの姿があった
え……？
俺たちがなかなか後をついてこないことに気づいたのか天城たちが戻ってきた
「どうしたのですか？騒々しい雰囲気ですけれど…ってA！？」
「どうしたの…って、う、うそ…A？」
「大丈夫か！？」
「おい、しっかりしろよ！」
あたりは一気に騒がしくなった
周りの人たちはザワザワし始め「誰か救急車を！早く！」と大声で叫ぶ人もいる
みんな怖くてたまらないのだろう…
目の前で血を流して倒れている人がいればそりゃまあ怖い
でも俺は、目の前で大切な彼女が倒れているのにひどく冷静だった
腹の底から怒りが湧き出るわけでもなく、逆に絶望感だとかそんなものでさえ一切感じられない
ただただ空虚感に襲われた
救急車のサイレンが聞こえる
頭の中にうるさいほど響いて鳴り止まない
救急救命士が頭を布でくるんでストレッチャーへ乗せる
「誰か付添で乗る方はいらっしゃいますか」
ここはやっぱり先生が行かないといけないところだろうな
辺りを見回しても先生の姿は見当たらない
「二郎、行かねぇの？」
「え？だって先生が行くんじゃ…」
「そんなの言ってる暇なんかないだろ、早くいけ」
神原に背中を押され救急救命士が「こちらへ」と俺を救急車の中へと誘導する
後ろのドアが閉まりサイレンを鳴らしながら病院へと向かった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
女王(プロフ) - カミサマさん» 応援ありがとうございます。ご期待に添えるようこれからも頑張って更新を続けます！ (2021年6月21日 20時) (
レス) id: c75b1bd3e5 (このIDを非表示/違反報告)
カミサマ(プロフ) - 面白いです！続き楽しみにしています！ (2021年6月21日 20時) (レス) id: 18de018685 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クーカー | 作者ホームページ：http://commu.nosv.org/p/mmyu671
作成日時：2021年5月5日 16時
