化物 ページ2
俺が紐を引いた瞬間、化物の身体が近くの木に縛り付けられる。
戦い乍、仕込んでいたんだ。
でも、力では絶対敵わない、いずれほどかれるから、油断しちゃいけない。
化物「何だこれは!こんなもの、すぐ切ってやる!」
俺が好んで使っていた紐が在る。
今、化物を縛っている紐がそうだ。
絹を細く細く捻って、鋼のように硬く丈夫にして、それでも柔らかい。
そこに松脂をたっぷり染み込ませてあるから、よく燃える。
そうして、常備している火打石。
『燃えちまえ!』
かっ、と音が一つ。
業火が一気に紐を伝って、化物の身体を包んだ。
化物の煩い悲鳴が轟く。
『今のうちだ、さっさと逃げろ!』
俺の声で母の方ははっと気付いたように立ち上がり、子を抱えて逃げた。
その瞬間だった、俺の頸を掴まれたのは。
『っ__!?』
見ると、焼き切れた紐と、未だに燃えて、火傷をした状態のままの化物が、腕を伸ばして俺の頸を掴んでいた。
巫山戯るな、何で腕なんか伸びるんだ。
化物「巫山戯やがって!巫山戯やがって!この餓鬼、喰うだけじゃぁ赦さねえ!ばらばらにして、頭を潰して、頸を捻って、そうしてから喰ってやる!」
煩い、此方の台詞だ。
お前が巫山戯やがって。
お前なんか、こんな腕なんか斬って。
糞、力ばっかり一丁前に強くいやがって。
息が出来なくて、視界が薄れていく中、俺の頸を掴む化物の腕が、目の前で切断された。
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作者名:狂桜 | 作成日時:2019年10月28日 21時