クリスマス･イヴ�� ページ45
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『……美々子と菜々子から美味しそうな匂いがする。食べ物食べに行くって聞いてない』
『食べ物？ ああ、猿の作った物のことか。でもA。キミは甘味を感じないからクレープをお土産にしても食べられないだろう？』
高専へ宣戦布告をしたあの日。原宿の竹下通りにあるクレープが食べたいと言っていた美々子と菜々子の為に猿どもで溢れかえる場所へ立ち寄れば、家に帰ってきて洋服に染み付いた僅かな食べ物の匂いをAは目敏く見つけて不機嫌になった。
『夏油様。お土産がないからAちゃん拗ねてる訳じゃない』
『Aちゃんのアレは"そんな御褒美あるのになんで私も連れてかないの" って意味』
お土産がないから拗ねているのかと思っていれば、美々子と菜々子の二人から耳許で交互に囁かれる。此方としては行かないという意見を通した迄だが、今それをAに言えば完全にキレて当分は口を利いてくれなくなる。
＿＿やれやれ。本当に困った
『A。じゃあ＿＿』
*
*
｢ふふ。どうかな。覚えはあるかい？｣
｢あ〜……思い出し、ました｣
傑の口から昔話をされている間に忘れていた部分の記憶が蘇る度に羞恥に駆られた。傑は笑いながら『美々子や菜々子よりもキミの方が手のかかる部分が多かった』と笑いながら話をしてくれたが、笑い事じゃない程ワガママだった自覚はあるのだ。それ等が全て許されてきたのは傑のお陰だと言うことも。
｢ほら。そうこうしているうちに一つ目の目的地｣
｢……クレープ屋さん？｣
｢甘いのだけじゃなくてサラダみたいな物もあるんだよ。ほら、あそこに番号が書いてあるから店員さんに伝えて作ってもらうんだ｣
傑が指さした場所にはメニューの番号と写真、名前が記載されている。取り敢えず並ぼうか、と告げられて最後尾らしき場所に向かおうと踏み出した脚が踏み止まる。
私の真後ろに立っていた傑は突然止まった私に驚いて『大丈夫かい？！』心配して声を掛けてくれているけれど、答えるよりも私は今、目の前に映る人物にただただ言葉を失っていた。
階段側から降りてきた若い二人の女の子。一人は真っ黒な髪でもう一人は茶髪。
多分、きっと、偶然だって分かっている。私が最後に記憶している制服と、今目の前にいるこの子達の制服が全くおなじな事も、偶然なんだって。
顔は見えていないから、背格好や髪型で判断するしかないと言われたら、間違いなく同一人物と言える。
｢……美々子、菜々子？｣
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作者名：愛 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時：2023年10月4日 16時
