Preghiera di duo～君が為の悲哀恋歌～ (ページ7)

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「何たって、ミオンは京子の白馬の王子──」
　「おにいちゃん」

　了平の言葉を遮って、京子は低い声で了平に呼び掛けた。
　今まで聞いた事のない京子の声が了平の耳を突き抜け、了平が京子を見れば、彼女はにっこりと満面の笑みを浮かべている。
　笑顔、なのだが、目が笑ってない。あ、この笑顔は何か知ってる。
　了平は、緊張の面持ちで京子を見つめた。

　初めて見る京子のその姿に、父親は驚いたように「京子？」と名前を呼んでしまう。

　「ミオンちゃんは勿論、私に同性愛の気はないんだけど……お兄ちゃん、まだ誤解してたの？
　いい加減、その脳味噌に新しい情報をインプットしたら？
　それとも、お兄ちゃんの頭はアップデートの利かないカスなの？
　っていうか、ミオンちゃんには婚約者がいるつったろうが」
　「ま、まぁ、落ち着け！極限に落ち着くのだ、京子！」

　真っ黒な笑みを浮かべている京子の目が段々と据わってきてるのを見て、了平は狼狽えながらも京子を宥める。
　そんな子供達を見て、「いつの間にか立場が逆転してないか……？」と、父親はぼーっと考えていた。

　(あれ、京子はこんなに怖い子だっけ？ “恐子”になってないか？)

　ふと、そんなことを考える。目の前には、ニコニコした顔で息子に詰め寄る娘。
　娘の背後には、般若が見えた気がした。

　その時、玄関の開く音がして、「ただいまー」と、母親の声が聞こえた。

　「京子も了平もまだ居るみたいだけど、2人とも学校はー？」

　ダイニングに入ってきた母親が、了平と京子を見て言った。
　2人は母親の顔を見るなり時計を見るなり、顔を蒼くした。

　「もうこんな時間なの！？変な事言ってる暇ないじゃない、お兄ちゃん！」

　時計はもうすぐで午前8時半を差す所で、それを確認した京子は急いで紅茶を飲み干すとトーストを一枚取って、「行ってきます！！」と、バタバタと家を出て行った。

　「極限に待つのだ、京子！！」

　その後を追い掛けるように、了平もバタバタと出て行った。