Preghiera di duo～君が為の悲哀恋歌～ (ページ15)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:640 hit

＊標的3 ページ15

―― ――

　「それにしても、吃驚したよ」
　「そうか」

　入学式と始業式が午前で終わり、京子はリオンと一緒に会場の後片付けで倉庫の片付けをしていた。
　生徒会や委員会のない生徒と手が空いている教師でくじを引いて担当場所を二人一組で割り振った結果、リオンと片付けをする事になったのだ。

　「でも、何で日本(こっち)に来たの？あ、リオン君が居るって事は、ミオンちゃんも来てるの？」
　「彼奴はイタリアだ」

　京子の矢継ぎ早の質問にリオンは「質問の多い奴だな……」と思いながら、短く答える。

　(まさか、「お前の護衛を任された」なんて言えねぇな)

　日本に来た理由まで訊かれるとは思っていなかったリオンは、別の理由を無理に考えようとする。

　ミオンには出国前に「絶っっっ対に京子に「お前の護衛を頼まれた」とか言うなよ。いいか、これはステルス・ミッションだ。絶対に京子に護衛のことは言うな、分かったか」と釘を刺されている。
　その時のミオンの顔は、血迷った事をすれば後ろから撃ち抜いてきそうな得物を見る鷹の目の如き殺気を感じるような表情だった。

　(あの目は絶対、“殺る気満々”の目だった……)

　ミオンは、重要な任務に於いて命令に背いた人間は例え身内でも容赦なく消す。
　それが例え、彼女が生まれた時から一緒にいる彼女の近衛侍従の自分でも例外ではない。ミオンはそう言う人だ。

　「そっかぁ……。まだ研究が進んでないとか？」
　「まぁな」

　日本に来た理由に関して何も言わないリオンに何かを察したのか、京子はミオンの話題で話を進めた。
　ミオンが研究の為にイタリアに戻った事を知っていた京子に内心驚きながらも、リオンは頷く。
　ミオンと京子は頻繁にメールのやり取りをしていた様だし、自分とも時折、手紙のやり取りをしていたので、ミオンが京子に現状を軽く話していても不思議はないか、と思えば、特に驚く内容でもないか。

　「でも、こっちに来るなら一言教えてくれても良かったのに」
　「何で」
　「そしたら、リオン君の歓迎会とかできたんだけど……」

　京子がリオンの方を振り返ってみれば、リオンは表情こそ解りにくいが微妙に目を細めて遠くを見るような目をしていた。
　リオンが嫌そうな時に浮かべる表情。