Gittering World (ページ33)

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『じゃあ撮影するね、』

深く息を吸い込んだ。

『3,2,1,はい』

校舎の片隅、空き教室。

中にいるのは冷と彩人だけ。

「どうしてここに呼んだの」

もう冷は昔と違う。
彩人を恐れるあまり言葉が出なくなっていた頃とは。
　
「お前が一番分かってんじゃねえの、"お楽しみ"をするためだよ」

やっぱり怖い。
彩人を演じる横浜さんは本当に違う人みたいだ。

「もうそんなことはしない、私は」

「お前にそんな選択権あると思ってる？」

ジリジリと壁に追い詰められて、威圧感のあるその瞳に見下ろされる。

「俺の操り人形なんだから黙って従えよ」

こんな興ざめしそうなセリフなのに、彼が言うと背筋に寒気が走る。

ここで冷の反撃だ。

「…ふざけんなよ」

思い切り頬を打つ。
これも前回同様打ち合わせしたことだ。

「もう中学の頃の私じゃないの」
「今のあんたが操れる人なんてごく一部でしょ」

冷ややかに笑ってみせる。

横浜さんの表情がほんの僅かに揺れたのが分かった。

アドリブだからねこれ。

「…何だよ、所詮弱者のくせに」

これは、彩人の負け惜しみだ。
冷が自分の思い通りにならないと悟った。

「弱者はどっちでしょうね」

___あの時の私も、そう言えていたなら