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「お見送りしていただかなくても良かったのに」

『俺がしたくてしたことだから。別にいいんだよ』

病院に2人で戻り、Aくんは病衣に着替え、俺はAくんが着ていた服を折りたたんでいた。

窓の外では西空の雲が灰色とオレンジ色のまだら模様に染まっている。まだ明るさを残す上空とは対照的に、闇色に染まりつつある地上の街並みは残業する大人の努力の星が浮かんでいた。

「…もし全てを知っているジョシュアさんと一緒に居たら記憶戻るのかな」

『…え?』

窓の外を眺めながらAくんはそう呟いた。

「ふふっ、少しだけそう思っただけです。冗談だと思っても大丈夫です」

きちんと整った色の薄い唇が、やさしい形に笑いをつくる。

俺は畳んでいた服を棚に置いたあと、傍にあった椅子に座って布団の上にあるAくんの手を優しく包み込んだ。

『…俺が…Aくんの記憶を取り戻せるのなら、…Aくんのそばに居たい』

「え、?」

今まで押さえ込んでいた気持ちを爆発させるように口からどんどんと言葉が溢れ出てくる。

『Aくんの記憶を取り戻したい。Aくんのそばに居たい。もしも記憶が戻らなくても…戻らない記憶より幸せな記憶を一緒に刻みたい』

揺れる彼の瞳を真っ直ぐ見つめる。

「……どう、いう……?」

『俺は好きだよ。君のことが』

「、!」

『記憶を無くす前からずっと好きだった。同性だし、気持ち悪いって思うかもしれない。それでもいい。ただ言わせて欲しいんだ。ずっとずっと好きだったよ。君が想像する何倍も俺はAくんを好きだという気持ちが大きいと思う』

衝撃だったのか、言葉をなくし顔を俯かせるAくん。

やっぱりダメだったか、と一瞬諦めたが、そんな気持ちは直ぐに打ち砕かれた。

「……気持ち悪くないです」

『えっ…?』

「全然、気持ち悪くなんかないです。ジョシュアさんのその気持ち、素敵だと思います」

『…Aくん……』

思わず、Aくんの頬をそっと撫でてしまった。
顎に手を這わせ、顔を上げさせるとAくんはほんのり顔を赤くしていた。

「!!…すみません」

『んふっ、可愛い』

「そんな率直に言わないでください…!」

さらに顔は熱湯を頭からかぶったように真っ赤になる。

「こういう、ちゃんと告白されたの初めてで、どう反応したらいいか分からなくて」

『素直なAくんの気持ちが知りたい。俺の気持ちとか関係なく、今のAくんの気持ち』

好→←綺



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作者名:ピーナッツバター | 作成日時:2021年8月2日 2時

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