籠-▽ ページ32
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｢はぁ…話しかけても全然ダメ。部屋から出てこようとしない｣
｢ちっ…またか…｣
スンチョリヒョンがそう言うと、ハニヒョンが舌打ちをして本日何度目かの貧乏ゆすりを始めた。
今日の昼、俺とジュニヒョンとハニヒョンでジスヒョンの好きな人について話してから、お昼ご飯を作りにもう一度リビングに戻ると、そこにはジスヒョンの姿は無かった。
部屋に戻ったのかな、と確認の為、少しだけ扉を開けて部屋の中を確認したら携帯の画面にあの子の写真を大きく映し出して、携帯を大事そうに握り締めたまま寝ていた。
俺はそれを見て、本当に好きなんだなって思った。
ジスヒョンのお昼ご飯も一応作っておいて、他のメンバーでご飯を済ませたけれど、夜になった今、ジスヒョンが昨日と同じくまた部屋に篭った。
ジュニヒョンが自分のせいかもしれないと責任を感じて、必死に扉の奥に声をかけるもジスヒョンは返事をしなかった。
ミョンホがもしかしたら部屋に居ないんじゃないかって言ったから心配になってまた扉を少し開けてみたけれど電気はついていたし、何より物音が聞こえてくる。
ガタガタと物音が聞こえては鳴り止み、そしてまた数分すると奥から呻き声のような声が聞こえてくる。
ジスヒョンは今苦しんでいるんだ。
あの子への本当の想いに気がついてしまったからこその代償を背負っているんだ。
ジスヒョンの苦しみを分けてあげられるメンバーは居なくて、誰もそばに居てあげられない。
スンチョリヒョンがジスヒョンに何度も出てくるように促すけれどジスヒョンからの返事はなし。
ハニヒョンは、部屋から出てこないことに対して怒っているのではなくジスヒョン自身に起こっているようだった。
｢はぁ…アイツマジで何やってんの？なよなよして、いつまでもたじろいでるからあの子のこと待たせて、迷惑かけて、忘れられるんじゃないの？｣
これ、ジスヒョンが聞いたら殴りかかりそう。
けれど、ハニヒョンの言うことも間違ってはいない。
俺ら3人と何故かその子の存在を知っているホシヒョンと何かに気付いているミョンホ以外は全員ぽかんとしている。なんのことか全く分かってない。
弟たちにも教えてやろうと思ったけれど、流石に好きな人が居るということを広める訳にはいかない。
それに、もっとちゃんと本人の口から言った方がいい。
スンチョリヒョンはずっと事情も聞かずにジスヒョンに声をかけるも、その夜はジスヒョンが部屋から出てくることは無かった。
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作者名：ピーナッツバター | 作成日時：2021年8月2日 2時
