決 ページ33
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起きるともう10時近くになっていた。
慌てて起き上がって、服に着替える。
時間を気にしながら、顔を洗ったり、歯を磨いて外出する準備を整えた。
｢あ、シュアヒョン…｣
弟たちに心配そうな顔を向けられながらもリビングに向かった。朝ご飯を食べているスンチョルのパンを一切れ取って、口に放り投げる。
｢あ！シュア！｣
『いってくる』
｢どこに？｣
あまりにも急いでいた為、スンチョルの問いを無視して宿舎の扉を開けた。
｢おい！待ってって！｣
｢めちゃめちゃ急いでたけど、あれなんですか？｣
｢さぁ…朝ご飯取られたし…｣
｢どこに行ったんですかね……｣
宿舎を出て、直ぐにタクシーを捕まえようとしたが、何故か今日は車が多い上に車の速度が速い。お陰でタクシーは俺に気付かず、素通りしてしまう。
このまま待つのも余計に時間を食ってしまうと考えた俺は行きたい場所へ走って向かった。
汗がどんなに出ようとも、ある一つのことしか考えられなくて、ただ目的地へと走っていった。
ポケットの中では携帯がずっと震えている。恐らく、メンバーからの着信だろうけど電源を落として、走り続ける。
目的地に着く頃には汗が顎を伝い、アスファルトにぽたぽたと落ちていった。
ハンカチで汗を拭いて、中に入る。
やや早歩きで"病室"へ。
深く深呼吸をしてから勢いよく扉を開けると、そこには空のベッド。
『A…くん？』
たまたま同室の患者さんの様子を見に来た看護師さんに声を掛けて、Aくんの居場所を聞く。
『あの…すみません…チェ・Aくんって今どこに…』
｢あぁ、丁度今日、外出許可がおりて外に…｣
その看護師さんの言葉を聞いた途端、頭を下げてから、病室から飛び出した。
俺はもう決めたよ。Aくんに言わなければいけないことがあるんだ。
彼が今どこに居て、何をしてるかは全く分からないけれど、あの子には心が惹かれる場所があると思う。
彼はきっとそこにいるはず。
俺がやってきたのは、いつものカフェ。
数日間もの空白の日を越えての久しぶりの来店だ。
店内は暗くて、窓から見てみると店主さんは居ないようだった。お客さんも誰一人居なくて、そういえば今日は店休日だったな、と思い出す。
ゆっくりドアノブに手を掛けて、すっと腕を引くと開く扉。同時に心地よい鈴の音もなる。
足音を立てながら中に入ると奥で人影があった。
誰かが席で本を読んでいるようだ。ページを捲る音が聞こえる。
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作者名：ピーナッツバター | 作成日時：2021年8月2日 2時
