恐-△ ページ11
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昔から人目を気にするのが怖かった。
誰かに見定められるのが苦手で、人との挨拶も出来れば避けたいし、このバイトだって向いてないと思ってた。
でもいざ始めれば知ってるおじさんばかりだし、何より皆さんが暖かい。
皆さんは口を揃えて言う。"店員さんの対応がすごくいい"。
それは僕の即戦力となり、モチベーションへと成った。
ジスさんを見ると未だ少し緊張はするけれど、今までの対応を心掛けて笑う。
お互いのあの趣味を語り合う時間が僕にとっても幸せだった。
年代が一回り違う相手と街のことについて話すより趣味が合う同年代の方と話す方が気が楽。
店主が毎朝言う、ジスさんだという声に毎回心が躍った。
けれど、其れは肩書きで全てが崩れた。
ジスさんことジョシュアさんは有名人。
ファンの方が言う通り、彼は世界的スターできっと彼がここに来ているとバレればここもいつかTVに取り上げられ、ファンの方が押し寄せるだろう。
彼に着いていく女性ファンも少なくは無いので、僕たちの姿も何度も見られていただろう。
そう考えるだけで頭が真っ白になって、手先の震えが止まらなくなる。
僕はいつの間に人に見られていた…？
あの笑顔もあの行動も全てが知らぬ間に数人に共有されていた。
お客さんの為だけだったのに、僕はずっと…？気づかずヘラヘラしていたのか？
今までの行動が馬鹿馬鹿しく感じてきて、鼻で笑う。
勝手に心躍らせて、勝手に本気で楽しそうに笑って、それなのにそれは全て見られていて、写真まで撮られて。
終いには、
｢今度友達連れて一緒に来るんで、ジョシュアに良い女の子が居るって紹介してくれません？あ、この画像Twitterに載せていいですか？｣
ジョシュアさんにそんなことが出来るわけがないだろう。そして人を呼ばないでくれ。
優しくお断りした筈なのに次の日から人が少しずつ増えていった。
彼女が本当にTwitterに載せたかは分からないけれど、ジョシュアさんが来店する10分くらい前に人がなだれ込んでくる。
店主は嬉しそうに頬を緩ませるけれど、僕はそれどころではないんだ。
接客中もジロジロと僕を見ては、携帯に視線を戻す。
その行為がどれほど怖いか。
ジョシュアさんとの会話だって、嫌なわけじゃない。でも、見る目が二倍くらい増えるからジョシュアさん以上に怖いし、気にする。
寧ろ、ジョシュアさんが死神のように見える。
ジョシュアさんが引連れた、あれは悪魔だ。
あの目が怖い。
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作者名：ピーナッツバター | 作成日時：2021年8月2日 2時
