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「A、彼に近づくなと言ったろう」
「ち、ちがっ…倒れそうになったのを助けてくれたの!御影くんからも聞いたでしょう?彼は悪い人じゃない!」
必死で否定する私を見て2人は顔を見合わせ、父は呆れたような溜息を吐く。
「確かに玲王くんから話は聞いたよ。悪い奴じゃないと言っていた。でもそれは玲王くんが男で、サッカー選手だからだ」
「だったら何だって言うの!?彼が私に媚びを売ってるって言いたいの?彼を侮辱するのはやめて!」
「A、体に悪いわ。あまり怒らないで」
「パパが変なこと言うから!」
久しぶりに本気で腹が立った。変なことを言って彼を侮辱する父に。
母に肩をさすって宥められ、はぁ、はぁと呼吸を整える。そうしている内に少しずつ、頭が冷静になっていった。冷えた頭で尚、父を睨みつける。
「取り消して。彼を侮辱するのは許さない」
「あ、ああ。悪かったよA。でも聞いてくれ、パパもママもAが心配なんだ。それだけなんだよ」
そっと、恐る恐るといった風に手が伸びて来る。拒まずにいると頭にその手が乗せられ、優しく撫でられた。
「Aのことが心配で言っているんだ。それだけは、信じて欲しい」
「…うん。私もごめんなさい、大声上げて」
「いいんだ。…A、自分の身は自分で守るんだよ」
言外に糸師冴と会うのはやめなさいとまた言われている。それに気付いてまた湧き出そうになる怒りを何とか堪えて頷いた。
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「御影くん」
「おお、九條。ごめんな、力不足だったか」
言い合っていたのが聞こえていたのかそう言って申し訳なさそうにする御影くんに首を振る。
「気にしないで。私から強く言ったし、暫くは大丈夫だと思う」
「そうか?ならいいんだけど」
「うん。あと…明後日、会うことになったんだ」
顔に熱が登っていくのを感じながら噛み締めるように伝えると、御影くんは私よりも喜んでくれる。
「よかったじゃん!やったな!」
「う、うん。どこに行くかは…まだ分からないんだけど」
「いやぁよかった、上手くいってんだな」
「うん。ありがとう、応援してくれて」
気にすんなよと笑ってくれる御影くんに私も笑い返す。
そんな私達の様子を遠くから見て、両親は安心したように微笑んでいた。
それを裏切る行為だ、これは。ただ私を心配してくれる両親を、裏切ること。
それを考えると気持ちが沈みそうだから、無理やり意識を外に向けた。
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瑠璃烏(プロフ) - エリザベス女王さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです!玲王は考察の余地を残そうと思って最後まではっきりとしたことは敢えて書いてないので、ご自由にご想像頂ければと思います😌見て頂きありがとうございました! (4月7日 14時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - どんな気持ちで助けていたのか、、、考えても考えてもまとまりません!冴くんがただひたすらにかっこよくてずっと三途の川を泳いでました!本当に最高でした!!ありがとうございました😭 (4月7日 11時) (レス) id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - 最高でした、、、‼︎主様の前作を読んでそこのリンクから飛んだのですが安定の最高さでした❤️駆け落ち系の話を見たことがなくて不安だったのですが初めてがこんな素晴らしい作品だだだ私は明日やらでも降るのかもしれません笑玲王くんはいったい (4月7日 11時) (レス) @page44 id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ニアさん» コメントありがとうございます!素敵な考察までして頂けて嬉しいです!2人とも本当にいいキャラですよね! (4月2日 12時) (レス) @page43 id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
ニア - この作品を読んでから2人をめっちゃ好きになりました!最後の切ない感じが最高でした…御影くん実は夢主ちゃんのこと好きだったんじゃないか…だから微笑んだんじゃないかとか色々考えていたら切なさときゅんきゅんが止まりません…ありがとうございました!! (4月2日 10時) (レス) id: b8d76587d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年3月6日 11時