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我が家は総資産数千億を超える巨大な企業。
数えきれない程の会社を抱え、あらゆるプロジェクトや芸能人、スポーツ選手のスポンサーとして至るところで名前を見かけるような。
その1人娘として生を受けた私に、ありふれた自由は無かった。
幼稚園から親が決めた学校を受験して入学して、エスカレーター式に高校まで上がり、今は大学生にまでなった。
習い事も親が決めたもの。服も髪型も何もかも両親が決めるもので、私の意思は関係ない。
でもそれが当然になったのは、私が抵抗をしなかったからだ。
「A、誕生日おめでとう!今年も無事に20歳になってくれてよかったわ」
「この1年も楽しいものになるといいなぁ」
「うん。ありがとう、パパ、ママ」
「ほら、初めてのお酒。美味しいワインなのよ」
「ん……飲みやすい。選んでくれたの?」
「ええ。Aが口にするものだもの」
10歳のあの事故の日から、両親は私を端から端まで自分の手の中に置きたがった。
自分の部屋はあるけれど、鍵はついていない。しょっちゅう部屋に母が来るからプライベートなんてあって無いようなもの。
____でも、あんまり悲痛だったから。
『私からAを奪らないで!お願いだから!』
酸素マスクと血液パックに繋がれて朧げな意識の中、聞こえた声が余りにも悲痛だったから。
「ほら、あーん」
「あ、む。…ん、美味しい」
「ふふっ、ここのケーキ美味しいわよね。また食べにきましょうね」
「うん」
クリームたっぷりのケーキはひと口かふた口で満足してしまえて、最後まで食べ切るのは少し苦しい。でも母が美味しいと言うんだからそうなんだろう。
最後のひと口を口に含んで、紅茶で流し込んだ。
「じゃあA、大切なお話をするわ。よく聞いてね」
「うん、なぁに?」
口の中を紅茶でリフレッシュしてソーサーにカップを戻した。
両親は顔を見合わせてくすりと笑むと、父から口を開く。
「Aの結婚相手が決まったんだ」
「……え?」
何を言われたのか、一度では分からなかった。
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瑠璃烏(プロフ) - エリザベス女王さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです!玲王は考察の余地を残そうと思って最後まではっきりとしたことは敢えて書いてないので、ご自由にご想像頂ければと思います😌見て頂きありがとうございました! (4月7日 14時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - どんな気持ちで助けていたのか、、、考えても考えてもまとまりません!冴くんがただひたすらにかっこよくてずっと三途の川を泳いでました!本当に最高でした!!ありがとうございました😭 (4月7日 11時) (レス) id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - 最高でした、、、‼︎主様の前作を読んでそこのリンクから飛んだのですが安定の最高さでした❤️駆け落ち系の話を見たことがなくて不安だったのですが初めてがこんな素晴らしい作品だだだ私は明日やらでも降るのかもしれません笑玲王くんはいったい (4月7日 11時) (レス) @page44 id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ニアさん» コメントありがとうございます!素敵な考察までして頂けて嬉しいです!2人とも本当にいいキャラですよね! (4月2日 12時) (レス) @page43 id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
ニア - この作品を読んでから2人をめっちゃ好きになりました!最後の切ない感じが最高でした…御影くん実は夢主ちゃんのこと好きだったんじゃないか…だから微笑んだんじゃないかとか色々考えていたら切なさときゅんきゅんが止まりません…ありがとうございました!! (4月2日 10時) (レス) id: b8d76587d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年3月6日 11時