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「あ…もしもし、御影くん?」
『おう。元気にしてるか?』
「うん。御影くんも調子良さそうだね」
『おう、絶好調。次も見てろよ』
「もちろん。応援してる」
夜、両親も寝たであろう頃にバルコニーへ出て小さな声で言葉を交わす。こんな時間に外に出て電話をしてるなんて、バレたら何を言われるだろう。
夜景の眩い光に目を細めながらスマホを左手に持ち替え、耳元にそっと添える。
「あの、話したいことがあって」
『ん?どうかしたか?』
「あの…1年、って。1年の間に好きな人が出来たら…って話。あれなんだけど、実は…出来ちゃって」
『え、マジ?』
本当に驚いた様子で御影くんは言う。それにうん、と頷いて答えた。
『マジか。え、どんなやつ?大学のやつ?』
「ううん。えっと、あの…サッカー選手の…糸師、冴さんなんだけど…」
『はあ!?』
大きな声に、思わず耳からスマホを離す。
御影くんは暫く慌てて何かぶつぶつと呟いていたけれど、そのうち落ち着いたのか静かな声でなるほど、と落とした。
『めっちゃびっくりしたけど、まあいんじゃね?俺としてはあんまおすすめ出来ねぇけど』
「応援、してくれる?」
『おう。そういう約束だったしな。あ、でも1年の間は恋人ごっこ続けような。1年付き合ってダメだったって報告にしたい』
「うん。ありがとう、御影くん」
『いいって。またそっち帰ったら、詳しく聞かせてくれ』
「うん。じゃあ…そろそろ。頑張ってね」
『おう。おやすみ』
優しい声に頷いて、通話を終了する。ホーム画面がぼんやりと浮かぶのを見つめて、大きく息を吐き出した。
言ってしまった。もう後戻りは出来ない。
ゆっくりと車椅子から腰を上げて立ち上がる。ここで転んだら誰も助けてくれないから細心の注意を払いながら、一歩踏み出す。
バルコニーの柵に手をついて空を見上げた。
「……よし」
頑張ろう。ちゃんと、歩けるようになろう。そしてあの人の手をきっと取るんだ。
そう心に決めて、両の足を踏ん張って伸び上がった。
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瑠璃烏(プロフ) - エリザベス女王さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです!玲王は考察の余地を残そうと思って最後まではっきりとしたことは敢えて書いてないので、ご自由にご想像頂ければと思います😌見て頂きありがとうございました! (4月7日 14時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - どんな気持ちで助けていたのか、、、考えても考えてもまとまりません!冴くんがただひたすらにかっこよくてずっと三途の川を泳いでました!本当に最高でした!!ありがとうございました😭 (4月7日 11時) (レス) id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - 最高でした、、、‼︎主様の前作を読んでそこのリンクから飛んだのですが安定の最高さでした❤️駆け落ち系の話を見たことがなくて不安だったのですが初めてがこんな素晴らしい作品だだだ私は明日やらでも降るのかもしれません笑玲王くんはいったい (4月7日 11時) (レス) @page44 id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ニアさん» コメントありがとうございます!素敵な考察までして頂けて嬉しいです!2人とも本当にいいキャラですよね! (4月2日 12時) (レス) @page43 id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
ニア - この作品を読んでから2人をめっちゃ好きになりました!最後の切ない感じが最高でした…御影くん実は夢主ちゃんのこと好きだったんじゃないか…だから微笑んだんじゃないかとか色々考えていたら切なさときゅんきゅんが止まりません…ありがとうございました!! (4月2日 10時) (レス) id: b8d76587d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年3月6日 11時