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『最後のパスすごかったです!』
『どーも』
『次も頑張って下さい』
そんなやり取りは糸師さんのスタンプを最後に途切れた。
彼と連絡を取るようになって少し経つ。私から試合の感想を送って、それに対していくつかの返事が返ってきて。それだけ。
でも連絡をする頻度で言えば御影くんよりも多いかもしれない。
彼を見ていると胸が高鳴る。胸がいっぱいになる。
今まで知らなかったこの感情が何なのか、知識としてだけなら知っている。
「……恋、」
たぶん、そうなんだろう。
ドキドキして、彼のことをもっと見たいと思う。もっと会いたいと思う。もっと話したいと思う。
どうして。彼とは面識はあるけれど、沢山話したことがある訳でもないのに。
でも多分、そんなの関係ないんだ。恋とは理不尽で面倒なものだと、何かの本で言っていた。
スマホの画面の中で澄ました顔をしているその写真を、そっと胸に抱き込む。
「A、入るわよ?」
「あ…はーい」
「課題は進んでる?」
「うん。ママはどうしたの?」
「ふふっ…はい、これ。玲王さんからのハガキよ」
「あ…ありがとう、ママ」
そうだった。『恋人ごっこ』の一環で手紙を送るって言われていたんだった。
手渡されたそれの写真を見て裏返せば、そこには「応援しててくれ」と短いメッセージ。それを見て口元に笑みを浮かばせ、そっと机に伏せた。
「玲王さん、マメな人なのね。お返事を書くのよ」
「うん。それよりママ、甘い香りがする。もしかしてバナナのパウンドケーキ?」
「あら、分かる?そうよ、呼びにきたの。勉強は一旦お休みにして、一緒に食べましょう」
「うん」
椅子から車椅子に移ってそれを押されながら、窓の外に広がる空を見て考える。
私もお手紙とか、糸師さんに送ってみようかな。住所は知らないからチーム宛に。ファンレターとして送ればいいのかな。
考えているだけで胸が躍る。その感覚に思わず緩む頬をそっと両手で押さえた。
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瑠璃烏(プロフ) - エリザベス女王さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです!玲王は考察の余地を残そうと思って最後まではっきりとしたことは敢えて書いてないので、ご自由にご想像頂ければと思います😌見て頂きありがとうございました! (4月7日 14時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - どんな気持ちで助けていたのか、、、考えても考えてもまとまりません!冴くんがただひたすらにかっこよくてずっと三途の川を泳いでました!本当に最高でした!!ありがとうございました😭 (4月7日 11時) (レス) id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - 最高でした、、、‼︎主様の前作を読んでそこのリンクから飛んだのですが安定の最高さでした❤️駆け落ち系の話を見たことがなくて不安だったのですが初めてがこんな素晴らしい作品だだだ私は明日やらでも降るのかもしれません笑玲王くんはいったい (4月7日 11時) (レス) @page44 id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ニアさん» コメントありがとうございます!素敵な考察までして頂けて嬉しいです!2人とも本当にいいキャラですよね! (4月2日 12時) (レス) @page43 id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
ニア - この作品を読んでから2人をめっちゃ好きになりました!最後の切ない感じが最高でした…御影くん実は夢主ちゃんのこと好きだったんじゃないか…だから微笑んだんじゃないかとか色々考えていたら切なさときゅんきゅんが止まりません…ありがとうございました!! (4月2日 10時) (レス) id: b8d76587d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年3月6日 11時