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懐古 ページ2

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「聖!!」


「うわあぁぁあぁっ!!」



手が離れたと思った瞬間、聖は何かに掴まれたように引きずり込まれて行った。

名前を呼んでも返事がない。周りは暗くて良く見えないし、恐らく引き離された___


ヤバいヤバいこれ絶対ヤバいやつ

ここ湖の中心だぞ?放り出されたら普通に死ぬ。溺れ死ぬ。

今ここが何処なのか分からなければ……


そんな事を考えていた刹那、冷たいものに体が包まれて息を詰めた。

その冷たいものが水だと気が付いた瞬間、辺りを見回して光を探し、取り敢えず水面に出ようともがく。

手足を動かして上を目指しながら、酸素の回らなくなってきた手を水面へ伸ばした。



「ッはぁっ!はぁッ、はぁ、はーーっ」



突然入って来た酸素に驚いて痛む気道と肺の辺りを摩って深呼吸を繰り返す。

ケホケホと軽く咳き込みながら顔を流れていく水を拭うとその水が黒く染まっている事に気付いて、小さく舌打ちする。



「チッ……染め直しじゃん…」



髪をぐしゃりと掴んで、ハッとした。


ーーここ、湖じゃなくね


俺、今立ってる。水位は太腿くらいまでしかないし、鯉とか泳いで___

慌てて周囲を見回して、息を吸い込んだ。


広い庭、灯籠、鹿威し、紅葉に枝垂れ桜


余りに見覚えのあるその景色に頭がぐらぐらしながら、池からよろよろと上がった。







「A?どうしたの、早く上がっていらっしゃい」







その声を聞いた瞬間、頭の中から記憶がさっぱり抜け落ちて。







ーー僕、何してたっけ


お昼食べ終わって、池の鯉に餌やって…



「お父さんと要もそろそろ帰ってくるわ。パイナップル頂いたでしょう?切るの手伝ってくれる?」


「ああ、今行くよ」



優しく微笑んで手招く母に返事をして縁側に上がり、庭とは対照的に洋式の家へ踏み入った。



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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年6月15日 14時

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