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術式 ページ6

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「呪力と、術式」



Aが五条の落とした単語を拾い上げて鸚鵡返しに言えば、サングラスを掛けてラフな格好でいる五条が頷く。



「そう。じゃあ呪力を電気、術式を家電だと思って」


「え〜…呪力という名の電気を、術式という名の電化製品に流して使うっていう…?」


「そう!あーー頭の良い子は説明が少なくて助かるねぇ。さすが全国模試上位常連」


「えっ」



素直に凄えなという気持ちで声を上げた伏黒だったが、その場の空気が凍り付く音を聞いて静かにAへ振り向く。

当の本人は僅かに俯いたまま視線だけを五条に向けて立ち尽くしていた。

しかし余りに鋭いその視線を受ける五条は大した事でも無いという風にすぐ話題を切り替える。



「んで、Aの術式の話だけど」


「あ、俺にも術式あるんだ。恵は犬とか呼び出すやつだよな?」


「あ…ああ、」


「そりゃ術式持ってない奴を僕が直々に勧誘したりしないさ!」



瞬きの間に切り替わる空気に自分だけが振り回されているのを感じて伏黒はひとつ息を吐く。

Aはいつもの調子に戻っているし、五条も本当に何も無かったかのように話を進めていく。



「Aの術式はね、感覚を共有する術式」


「……ん?」


「よしA、目ぇ閉じて」


「え、あ、はい」



要領を得ない五条の発言に眉を顰めつつ、Aは素直に目を閉じる。

五条は肩に手を置いて何度かトントンと叩きながら、リラックスするように伝える。

ひとつ深呼吸したのを確認して、そのテノールが真剣な声で指示を伝えていく。



「目を開けて、集中して」


「……」


「よし。…何か腑が煮えくり返った時の事思い出しながら、床の色は黒なんだって脳に命令して。思い込ませて」


「は…?」



意味の分からない漠然とした指示に困惑気味に声を落とした伏黒が顔を顰めるのを他所にAは瞼を下ろす。

そして、また持ち上げた瞬間。



「っな…ッ!」


「おおーっ!すごいじゃんA!」


「ッは…」



畳だった筈の床が突然真っ暗になれば誰だって千鳥足を踏むだろう。

しかしその衝撃的な景色はAが瞬きした事で解け、Aは大きく息を吐き出した。



「瞬きが術の発動と解除の条件かな。でも良いね、これがAの術式だ」



こうしてAの長い修行の道が、幕を上げた。



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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時

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