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大人 ページ24

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お札の投入口に千円札を滑り込ませて、同じ炭酸飲料2本とミルクティー1本分のボタンを押す。

流れてくる機械音が途切れて、もしもしと優しげな声が聞こえてきた。



「もしもし、淳司さん?久し振り。僕だよ、A」


『ああ、久し振り。珍しいねAくんから掛けて来るのは。どうかした?』


「えっとね、僕の担任の先生…五条悟さんって言うんだけど、一度淳司さんと会って話したいって。直近で予定空いてる?」


『…へえ』



変な間があったなと首を傾げながら返事を待っていると、ゴソゴソガサガサと音がして少し考え込む様子があってから声が返ってきた。



『私は知っての通り在宅勤務が常だから、五条さんの方がお忙しいだろうし空いてる日を聞いてからこっちが合わせるよ』


「じゃあそう伝えるね。要はまだ学校?」


『ああ。何か伝えるかい?』



親切な申し出に感謝と辞退の意を伝えて通話を切り、ふぅ…とひとつ息を吐く。

変な詮索されたくないけど、一応俺の命を預かってくれる先生だし。良い先生である事に間違いは無いから。


スマホのアルバムを開いて一枚の写真を眺めて、直ぐに閉じる。



「……釘崎、恵。何してんの」


「ウッ」

「…悪い」



スマホをポケットに突っ込んで振り向き、自販機の取り出し口から炭酸飲料とミルクティーを取り出して放る。

慌ててキャッチした2人にナイスキャッチと声を掛けて立ち去ろうとして、ガッと肩を掴まれた。



「コラ待て。"僕"っつった?言ったわね?」


「悪い。聞くつもりは無かったんだが」


「だあぁあ放っとけ!お世話になってる人なんだよ!良い子で居たいから一人称も変えてんの!」



予想通りの追及を振り切り、しかし逃げるのは諦めてペットボトルのキャップを捻りながら答える。

すると釘崎は感心したように目を開いて言った。



「へーえ。アンタ意外と大人なのね」



思わず、飲み口をカシッと噛んだ。



「っ…そんなんじゃねぇよ。俺なんて全然大人なんかじゃない。恵の方が大人だろ」


「そう?…ああまあ、雰囲気だけはね」


「あ"あ?雰囲気だけってなんだ、だけって」


「そーゆーとこよ」



目の前のやり取りを笑いながら眺めて、さっきの笑みは歪んでいやしなかっただろうかと静かに案じた。


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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時

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