化物 ページ2
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「はぁ〜……」
「おい」
「ん?」
「お前もしかして、呪霊…さっきの化物いつも見えてんのか」
「え、見えてるけど」
家まで要を運んでくれた彼は、伏黒くんと言うらしい。
伏黒くんが要をベッドに寝かせてくれている間に体温計やら冷えピタやらの用意が出来て凄く助かった。
さっきの化物が常に見えるのかと問われて迷わず頷いたら伏黒くんは少し目を見開いて、何かを考え込むように俯いた。
その伏黒くんをリビングまで案内してお茶を淹れ、何かあったかと冷蔵庫を覗く。
少し残っていたバウムクーヘンを取り分けていると彼の落ち着いた声が飛んできた。
「弟…要って言ったか。あっちは?」
「見えてないんじゃない?普段はボヤボヤしたのがいる、とかそんな感じ。はいこれ、どうぞ」
「…そうか。ありがとう」
食べる間に随分と親交が深まった。
さっきの化物は呪霊と言って、人の負の感情から生まれたものだという事。
見える人は然程多くなく、俺は貴重な人材だという事。
そして彼が通う学校、呪術高等専門学校の話。
一通りの説明を受けて紅茶を啜り、ポツリと呟くように零す。
「……そこに行ったら、こんな事があっても助かるかな」
「呪霊の強さにもよるが…強くなれば大抵は祓える」
「俺、死にたくないんだよね。アレに襲われて死にかけたこと何度もあるけどさ」
苦笑しながら言うと伏黒くんもちょっと笑って、紅茶を飲み干した。
立ち上がる彼を玄関まで案内した所で彼は「じゃあ」とポケットに手を突っ込み、スマホを軽く振って見せる。
慌ててスマホを取りに戻って、連絡先を交換した。
「何かあったら電話しろ。…あと、高専の話」
「ああ。考えとく」
答えると伏黒くんは頷き、じゃあなと手を挙げて扉を出て行った。
「呪霊、か……」
15年間悩まされてきたものに名前があって対処法があると知れて、ちょっと安心した。
要が静かに寝ているのを確認してリビングに戻り、皿やカップを洗いながら伏黒くんの言葉を反芻する。
「呪術高等専門学校…」
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2021年4月29日 19時