10 番外編 ページ10
Aとおついちが付き合って数日後
Aは改めてお礼に弟者の家に来ていたが弟者の姿はなく兄者しかいなかった
「あの、弟者くんはいないんですか?」
「それがあいつ電話にも出ねぇし既読もつかねぇんだよ。今日の朝どっか行くつってたけど」
「行きそうな場所に心当たりあります?」
「あり過ぎて困るくらいなら」
「なんですかそれ(笑)」
とりあえず心配だから探してくると伝え家を出るとAは唯一彼が行きそうな場所を思い出していた
ここから電車でそう遠くない場所。初めて2人で出かけた時に行った夕日が綺麗に見れる大きな橋
彼ならきっとそこにいると確信に近い予感があった
目的につく頃には空は紅く染まり陽が傾いていた。彼の姿がないか見回しながら歩いていくと夕日に照らされて動かない弟者がいた
「そこのお兄さん、私道に迷っちゃって帰り道が分かんないんですけど助けてくれませんか?」
「...交番ならここ真っ直ぐ行って右に曲がるとありますよ」
「ちょっと!」
わざとらしくAが怒ると弟者はくすくすと笑った
Aも弟者の隣に並んで夕日を見ていた
「こんな所で何してたの?」
「なんだろうね」
「まさか..自 殺?」
「違うわ(笑)」
「だよね(笑)」
「..本当は色々思い出してた」
「何を?」
「楽しかった思い出」
「..」
「でも、もう忘れなきゃいけないんだよなぁ」
「..」
Aは黙って弟者の話を聞いていた
ゆったりとした時間が2人の間を通り抜けていく
「いつまでも未練たらしく引きずってるのも前に進めないしさ。」
「ゆっくりでいいよ」
「ん?」
「ゆっくりでいいんだよ、進むには」
「うん」
「さ、帰ろうか!兄者さん心配してたよ。電話も出ない既読もつかないって(笑)」
「あ、電源切ってた」
「何してんのよ(笑)」
「後で怒られるパターンだ..」
「一緒に謝ってあげるから(笑)」
「よろしくお願いします(笑)」
じゃあ行こっかと、手を差し出すAに弟者は戸惑ったが有無を言わせないAの表情に躊躇いながらも手を繋ぐ
「いい歳した大人2人が手を繋ぐとか(笑)」
「えー弟者が迷子にならないようにするためだよー」
「俺かよ(笑)」
「当たり前じゃん!弟者が道迷っても見つけてあげられる自信あるからね!」
「そりゃどうも」
闇に染まる街の中を2人が明るく照らすように歩いて消えていった
61人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美月葵 | 作成日時:2018年5月2日 17時