人はそれを恋と呼ぶ【鶴丸国永】

5話 ページ6

あれから一週間程たったが、一度も鶴丸さんとは話していない


そしてこの一週間で分かったことは、鶴丸さんはこの本丸の問題児であるということ


具体的に言うと、落とし穴を掘ったり、他の刀剣の方が寝ている隙に顔に落書きをしたりと、それはもう好き放題やっていた


これについては私がここに来る前からそんなことをしていたみたいだが


…そういえば鶴丸さんと最後に話したあの日の朝も光忠さんに怒られていたような


一期さんや薬研から聞いた話だが、鶴丸さんは『驚き』が好きらしい


そのために、驚きという名の迷惑を皆さんに届けているのだそうだ


聞けば聞くほど鶴丸さんに対しての苦手意識が強くなり、話しかけられても避けるようになっていた


最初は仲良くなれるかもしれないと思っていたが、あんなことを言われ、加えて見た目とは反してびっくり爺だったということに印象は悪くなる一方だった


まぁでも、評判で人の性格を決めつけるのは良くないし、あの言葉もそういうつもりで言った訳ではないのかもしれない


…だとしても一言余計だったと思うが


それにしても、『驚き』が好きだなんて変わってるな…


私は今まで沢山の戦に出てきたが、私自身、戦はあまり好きではなかった


刀の意味は人を斬り、命を奪うこと


そう分かってはいても、儚い命を奪うというのは決して気分の良いものではなかった


残るのは、虚しさと罪悪感だけ


だから私は変化を求めなかったし、変化することに何の意味も感じなかった


変わらずそこにあり続ける、それこそが平和で、幸せなのだろうと思う


鶴丸さんは『人生には驚きが必要』と言っていたが、私はそうは思わない


…やっぱりあの人と分かり合うことは出来ないだろう

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