頂への道のり【男主】【GIANTS】

# 29 ページ34

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＊ 小林side ＊






「よしっ！ A、行こう！」



「はい！ この回もよろしくお願いします！」




４回の裏の攻撃で勇人さんのヒットと盗塁、阿部さんの四球、修さんの左中間へのタイムリーツーベースで更に２点加えて点差を８とし、波に乗っているジャイアンツ。



見る限りAも調子が良さそうで、球のキレもスピードも少しずつ上がってきている気がする。(もしかしたらスロースターターなのかな？)









「(...さっきはセカンドゴロだったけど、少し危なかったなぁ。)」



相手の攻撃、打者は５番のバレンティンで、初回打席はゴロで打ち取ったものの少しだけ球を見分けられていた気がする。



とりあえず様子見ということで、Aに外角低めのスライダーの合図を送ってみる。



「...！」



投げられた球はギリギリのところを捉えストライク判定を得たが、向こうは微動だにしなかった。



変化球狙いでないなら直球は危険だなと思ってフォークの合図を送る。









「！」



「っ！」



ミットに収まるはずだった球は高い音をあげて右中間方向に高々と飛び、そのまま観客席に入って行った。



打った打者はゆっくりと自分の前を通ってベンチにいる仲間とハイタッチを交わしている。



絶対的な自信があってAに変化球の指示を出したから、申し訳なくて彼の方を向くことができない。



次の打者が入ってきて、次は打たれないようにしようという思いで外角のストレートを合図すると初球で打たれてしまった。









「(集中できてない。しっかりリードしないと...！)」



次の打者の癖を考えながらAに指示を出す。



１ボール、２ストライクで決め球を内角高めのストレートにしようと合図を送るが首を振るA。



球種を変えずに高さ変更の指示を出すが首を振り続けるので、もしかしてと思いフォークの合図を出してみると首を縦に振り頷いた。




「(...ほんまに勇人さんの言う通り精神面の強化早すぎ。)」




こっちが追い付かないわ、なんて思ってミットを構える。



投げるモーションに入ったAは少し口角を上げて笑いながら大きく腕を振ってこちらに球を投げてきた。



フォークはストレートと同じ軌道を描きながら向かって落ちてくるため判断しづらい。その上Aのストレートは基本速球だから本当に打てない。



ミットに収まった瞬間声をあげるA。









(っしゃあ！)

(...ほんまに恐ろしいわ。)





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