飛蜜 ８ ページ8
「嬉しかったから。そんな謝らないで」
「ぇ、嬉しかった……って、なん、で？」
すぐ耳元で、声がする。ヘンな感じ。腕の力が、わずかに強まって。
「Aも、離れたくないんだって」
瞬きをすれば、雫が落ちて飛貴のワイシャツを濡らした。バカじゃないの。バカでしょ。落ちろ、って言われて、嬉しい人がどこにいるのよ。
ねぇ。同じ気持ち、って思って良いの？おずおずと、飛貴のウエストに腕を回した。緊張して、倒れそう。
「……Aのこと。大好きだよ」
空気を読まず、鼻水まで出てきてしまって。どれだけ泣いてるんだ、私。もう、我慢したくない。全部、全部。キミに届いてほしい。届け。
「私、も。飛貴のこと……大好き」
体が離れる。でも、お互いの顔の距離は近いまま。そっと包まれた、両頬。目が、合わせられない。飛貴は今、どんな顔で、どんな気持ちで私を見ているのかな。
────あ。キス、される。
静かに閉じた瞼。すっかり晴れた空に、丸い満月が私たちを見守っていた。
ー「……うへー。あっつ。日本って感じ」
大きなキャリーバッグと、お土産がどっさり入った袋片手に空港を出る。五月下旬。もうすでに気温は高く、ほとんどの人が半袖だ。
まだまだ時差ボケ。ちょーねむい。何度目かわからない、大きな欠伸をした。ほんのりと染めた茶髪。前よりちょっぴり伸びた身長。
買ったばかりのスマホを取り出し、早速電話をかけた。
「もしもし、A？」
「あ、おはよー。え。電話して大丈夫？」
「うん。もうこっち着いた」
「…………え？こっちって、え？日本……着いた、の？」
「うん！てことで今からそっち行くねー！」
「え、ちょ、ウソ待って聞いてない！ズルすぎ！もー！ちょっと切るね！バイバイ！」
乱暴に切られた電話。会話はわずか三十秒。ドタバタと用意する姿が浮かんで、綻んだ。Aに会うのは、四ヶ月ぶりだ。
「……喜んで、くれるかな？」
ポケットに忍ばせていた、四角い黒の箱。それを開ければ、日差しを浴びてキラリとリングが光った。
待っててくれて、ありがとう。
約束覚えてるかな？絶対に、幸せにするよ。
再びケースを大切にしまい、重たいキャリーを引きタクシーを呼んだ。
ー制服の魔法 浮所飛貴編 ENDー
NEXT 橋本涼
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ミント(プロフ) - どのお話もとても素敵で、短編なのに引き込まれる世界観が大好きでした！おつかれさまでした！ (2019年1月14日 15時) (
レス) id: e20fb3d910 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆちゃん(プロフ) - 私の大好きなマジョマリがまた読めるなんて感激です（ ｉ _ ｉ ）楽しみです！頑張ってください！ (2019年1月1日 2時) (レス) id: f9588c4e4d (このIDを非表示/違反報告)
真優(プロフ) - ゆうぴのお話で、ゆうぴが一個上の先輩で、主人公が後輩の関係で直接会うとあまり話せないけどラインとかだと話せるみたいな仲でクリスマスに後輩が告白する的なものが読みたいです！ (2018年12月24日 2時) (レス) id: f8f4960291 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - お忙しい中お返事ありがとうございます(TT)！わぁ、そうだったんですね…！どれも素敵なお話だったので残念で寂しいですが、お返事頂けて嬉しかったです！これからも楽しみに読ませて頂きます☆ (2018年11月22日 22時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
れなさん(プロフ) - りんさん» りんさんはじめまして！いつもありがとうございます(*^^*)実はDeuxの方削除してしまいました……。もし好きな作品だったら本当に申し訳ないです(；_；) (2018年11月21日 19時) (レス) id: c72a49e4f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れなさん
| 作者ホームページ：れなちゃん(@pinky_lovers98)さんをチェックしよう https://twitter.com/pinky_t17?s=...
作成日時：2018年5月25日 17時
