〃 ページ32
＊
――どうしよう。
…何で。何で引き止めてしまったんだろう。
｢……?｣
これは、僕の勝手な解釈に過ぎないが。
きっと、目の前の青年は、自分の立ち位置を見つけられないでいるのだと思う。
彼は紛れもなく人間で、僕ら国とは違う。
それなのに、国であるロシアさんと"友だち"になっている。
｢Aくんとは、ただの友だちだよ｣
彼の言葉には、偽りがなかった。
信じられなかったけど、認めるしかなかった。
理由は至って単純。
彼に、Aさんに向ける眼差しが、純粋に優しかったから。ただそれだけなのに。
…少し、ほんの少しだけど。
羨ましいと、思ってしまった。
｢――…なんで、｣
｢――え…?｣
彼は人であり、僕らとは全く違うというのに。
僕らのような存在でさえ、惹き寄せてしまうような、特別なモノを持っているというのに。
何を、そんなに迷う必要があるのだろう。
だから、気づけなかった。
｢…何で、貴方は"此処"に居るんですか…?｣
｢…っ……｣
その時した質問が、どれだけ――
目の前の彼を傷つけたか、なんて。
考えもしなかった。
___
｢………わかりません｣
あの後、二、三秒程間を置き、何とか
…そういえば、声の方は震えてしまって無かっただろうか。
……あーあ。
ホント何も言わずに、会議室から出て行っちゃったから、絶対後で怒られるだろーな…
｢『何で、"此処"に居るのか』か…。｣
ひっそりと廊下に反響した声と一人分の足音に、何処か安心する自分が居た。
もう既に会議は始まっているだろう。
｢なんでだろーな…。｣
すっかり忘れていた。この世界は優しい、けれど、俺がかつて居た世界ではない上、そもそも始めから存在していたわけでも無いのに。
｢バカだな……俺…｣
何時からこの世界が、この世界の人達が。
俺みたいな異端を、受け入れてくれる程、甘い世界だと錯覚していた?
――とうの昔に気付いてた、はずなのに。
｢｢まだ分からないのか?撫養君｣｣
｢｢君はもう_____"用済み"なんだよ｣｣
｢ｯ…｣
頭が痛い。
視界が歪む。
力が入らない。
息が――…
｢――Aさん!?｣
そして――――暗転。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 377人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フロックス(プロフ) - ありがとうございますm(_ _)m (2021年11月17日 21時) (
レス) id: 091c3771fc (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - フロックスさん» コメントありがとうございます。恥ずかしいとか可愛いとかの意味だったと思います！ (2021年11月17日 21時) (レス) id: 988d605ba2 (このIDを非表示/違反報告)
フロックス(プロフ) - すみません。"みったぐね"ってどういう意味ですか？ (2021年11月17日 18時) (レス) @page27 id: 091c3771fc (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫 - すみません、「続きます」のところで[完結]状態になっております。直した方がいいかと思います。失礼しました。 (2020年5月7日 13時) (レス) id: 33555fdbbd (このIDを非表示/違反報告)
melancholy.(プロフ) - あっしゅきです…。更新楽しみにしています！ (2019年11月18日 13時) (レス) id: 02f6747105 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
